(新春対談3) 国民は何を知ったのか、知らないのか

Clip to Evernote

 

 

 表紙3日.jpg

 

対談:

村田光平さん(元駐スイス大使)、川内博史さん(前衆議院議員)

司会:高橋仁也(KAZE to HIKARI)以下、敬称略

PDF: ★新春対談 第一部・二部・三部(2014.1.3).pdf
 

三部.jpg

■忘れる、忘れさせる

 

高橋

事故当初は東京でも、何を食べたらいいのか、どこで外食したらいいのか、特に子どもを持つお母さんたちはとても心配していました。しかし1000日過ぎて、どうも食料に対する放射能意識が少し薄れている気がします。だけど、汚染水は大量にどんどん垂れ流されていて、魚は特に心配です。食料は特定地域の問題ではなく、全国の問題です。ただ、そうは言っても、幸せを感じるためには、嫌なことは忘れたいという人情も分かります。今日はお正月で、家族みんなでおいしいものを食べていると思います。

 

村田村田さん3-1.jpg

心配ですね。私はオリンピック問題でも、実は国際的にこの事故のことを忘れさせようという大きな戦略があるのではないかと思っています。しかし、福島のことを忘れさせることができるとしても、地球的規模に拡大しつつある海洋放射能汚染は隠せず、世界は目覚めつつあります。事故を矮小化(わいしょうか)させようとする、放射能の恐ろしさを矮小化させようとする動きがあることは否定できません。

 

高橋

問題を小さく見せようとする矮小化作業の一方で、被害は逆にどんどん顕在化します。

 

村田

私は、この状況をある段階で是正しないと、日本国民の将来は嘆かわしいものになると思います。そして、あと数年で目を覆うような被害が表面化しだすと、電力会社と一蓮托生でやっている政治家にとり、致命傷になると思います。世論は激変するでしょう。

 

川内さん

矮小化の一番ターゲットになるのは、福島そのものですね。住民はいつでもニコニコしていれば放射能に対して免疫力が保てる、そして福島のことを大事にしない人は風評加害者だ、絆を大事にしない奴らなんだと批判して、福島の市民を抑え込んでいるのです。10月にIAEA(国際原子力機関)の調査団が来て、日本は立派に除染をやっていると褒めあげて帰りました。じゃあ、なぜ原発の敷地に入らないのですか。そこの土を少しでもサンプリングすれば、もしかしたら、事故は水素爆発ではなく水蒸気爆発だったかもしれない、あるいはそれを超えて即発臨界爆発(燃料のみで臨界して爆発に至る)が起きていたかもしれない。そうではあれば、チェルノブイリどころではないとてつもない事故となります。そうした、基本的な調査すらせずに、福島を抑え込んでいるのです。

 

 →facebookここまで

 

 

村田

今の世界の各国政府はIAEAに加盟しており、原発容認なのです。IAEAは電力会社と密接な関係にあることは周知の事実です。したがって、日本に対する助言もこうした立場から行われています。これは悲しいかな、世界の実態です。しかし、この事故はすでに電力会社の経営危機ではない、国家の危機なんだ、という認識が徐々に広がりつつあります。それは、監督官庁の中でも同じように浸透しつつあります。私は経産省の事故対策に責任ある課長とメール交換ができるようになりました。あらゆる立場を超えて、国家の危機に対応すべき段階に来ているのです。

川内さん3.1.jpg 

川内

心ある見識者やリーダーが原発の問題をしっかり把握・理解して、脱原発をはっきりと表明しています。ところが、その一方で、国民はそのことを忘れ「させられ」ようとしています。原子力ムラは、その忘れさせようとする流れに乗っかっているのです。しかし、こうした国家的危機の時、彼らが相手にすべきは私たちなのです。はっきりと反対する私たちと、きちんと議論するべきなのです。

  

  

 

 

 

 

 

 

 

■脱原発の他律的トレンドはあるか

 

高橋

脱原発を運動として市民、見識者、政治家がすすめていく必要があることは既定路線です。こうした自律的・主体的な側面とは別に、他の要素が原発を封じ込める、他律的トレンドがあると思いますか。

 

村田

まず、アメリカがどんどん変わりだすと思っています。最近では米国原子力規制委員会のアリソン・マクファーレン委員長が、原発を作るにはまず廃棄物の問題を解決してからやるように、とはっきり言いました。それから、元・規制委員のピーター・ブラッドフォード氏は、安倍首相が海外に技術協力を求めるのはいいけれど、事故処理の主体が東京電力ならば、日本の原子力ムラが国際原子力ムラに代わるだけだとの発言が伝えられております。つまり、原子力ムラから切り離すという意味でも、日本の国策でやるべきだ、と示唆したわけです。しかも、アメリカのエネルギービジネスにおいてはすでに安全対策強化により原発はコスト的に劣勢ですし、テロの危険にも怯えている始末です。

 

高橋

アメリカはシェールガスが価格破壊を起こして、すでに原発が5基程度止まっていますね。

 

村田

そうです。そしてビジネスに限らず、世界の良識こそが他律的なトレンドとして日本に影響を与えるでしょう。マハティールさん(マレーシア第4代首相)が、事故以来3通も手紙をくれました。そこには、原子力は人類がまだ制御できないし、核反応は起こせても放射能の無効化はできない、だからこれまできっぱりと拒んできた、と書いてありました。彼は、私が所属する地球システム・倫理学会が提唱している国連倫理サミット、そして、3月11日の地球倫理国際日に大賛成と、エールを送ってくださいました。最近、オバマ大統領、国連事務総長にメッセージを書きましたが、それは、国際的な多数の良識派の有志の依頼を受けたものです。世界の良心は、すでに国際トレンドの基盤を成しています。さもないと、世界は終わるわけです。

 

高橋

アメリカの原発衰退のトレンドは、シェールガスの台頭が背景にあります。こうした、コスト問題が日本にも影響を及ぼすのでしょうか、あるいは、相変わらず総括原価方式で、国民は分からないまま過ごすのでしょうか。

 

川内

電力システムの方向性は、経産省が管轄する「電力システム改革専門委員会」で決めるのですが、総括原価方式は当面の間、残す、とはっきり方針化されています。

 

高橋

そうですね、2012年2月から1年間12回開催された同委員会では、総括原価方式の維持を早々と決め、後は発送電分離がどんどん形骸化される、電力会社にとって都合のいい議論だけがされました。昨年2月に、報告書が書かれています。

 

経産省:「電力システム改革専門委員会」議事録

http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/2.html

 

川内さん3.2.jpg川内

日本のLNG(天然ガス。熱効率がもっとも高く、ベース電源やピーク時をもカバーする火力発電にも使われる)の最大の購入者は東京電力です。彼らには総括原価方式があるので、いくらの値段で買おうが構いません。総括原価方式は、コストにパーセントを掛けて利益を決めるので、高い値段で買う方が彼らは儲かるのです。LNGを安く買うというインセンティブ(モチベーションを誘引するもの)は、まったく、ないわけです。

 

高橋

財務省は貿易収支が赤字になるというのは、火力発電の電源構成比が上がったからだと言っています。昨年の輸入総額の内、7%程度(LNG:原油=7:3)が火力発電のために化石燃料の輸入がされました。ただし、メーカーなどの大企業は自社で火力発電所を所有しており、すでに原発54基分以上の発電力を持っています(企業5582万Kw、原発4353万Kw)。この分を考慮すると輸入総額の7%の内、2~3%は直接大企業が自家発電に使い、残り5~4%程度を電力会社が使っていることになります。同じ購入価格と言うことが前提ですが。

 

川内

そうですね。大企業は電力を自家発電でまかなっても、圧倒的に数の多い中小企業にとっては、電力会社の電気料金値上げは大きなコスト圧力になります。電力会社にとって最も大きな収入源となっている家庭も負担が増大しています。問題は、そうした事実を積み上げながら、「原発を動かさなかったら、値上げするぞ、日本経済がだめになるぞ」と脅しをかけていること自体が、非道徳なことなのです。そもそも、もっとも発電に使われているLNGを、政府や産業界でまとまって安くする交渉をすることこそが、日本経済のために必要なわけです。

 

 

■マスコミの果たす役割

 

高橋

国民は、経済がだめになる、という脅しには弱いですね。二つの選挙で自民党が生き返ったのも、原発に不安な気持ちは強いのだけど、長期的な不景気にはこりごりだという思いが、かなり働いていたと思います。

 

村田村田さん3-2.jpg

今日にでも強い地震が来て、原発がどうなるかわからないときに、多くの国民に危機感が絶無、というのはマスコミの責任だと思います。

 

川内

本来は、マスコミの果たすべき役割は、複雑な現代ではとても重要なものだと思います。しかし彼らは、記者クラブに居座って、政府、大本営が発表するペーパーをそのままニュースの記事に書いているのですから、まったその機能を果たしていません。真のジャーナリズムがないと、世の中はおかしな方向に行ってしまいます。

 

村田

そのマスコミが、報じなかった、重要なことがいくつかあります。核戦争防止国際医師会議(IPPNW。1985年にノーベル平和賞を受賞)が、これまで核兵器だけに反対していたのですが、昨年(2013年)の6月についに原子力の平和利用、つまり原子力発電に反対の立場を打ち出したのです。私は、すべての主要なマスコミに知らせましたが、一切、報じられませんでした。それからユネスコクラブ世界連盟が、昨年3月に、3月11日を地球倫理国際日として公式に提案しました。また、昨年11月ウイーンで開催された世界宗教者会議は放射能の脅威からすべての生き物及び未来の世代を守るよう訴える宣言文を採択したのです。マスコミはこういうことを報じないのですね。

 

 

■来年、何をするか

 

 

高橋

さて、今年は自民党が原発の再稼働に向けて全力でやってくる、大変厳しい年になりそうです。そうした中で、お二人は何をしていいきますか。

 

川内さん3.3.jpg川内

私はこれまで福島原発事故の原因について、地震で配管が損傷したのではないか、と調査して来ました。1号機の中に、民間人としては初めて入り、配管損傷に関する有力な証拠となる映像も撮ってきました。ひとつ目は、引き続き、この調査を続けて、事故の原因を明らかにしていきます。

ふたつ目は、大規模集中型の原発は、これからの地方の時代、中小企業の時代、あるいは生活者の時代には合わないわけです。小規模、分散型、地産池消型の電源・エネルギーというものを各地に、地域の人々の手によって作りだしていく必要があります。私は中小企業のみなさんと組んで、天然ガス火力発電所を設置したり、あるいは地元が鹿児島で地熱の宝庫ですから地熱発電所を設置したりしたいです。こうやれば、ほら、地域は良くなりますよ、と言葉ではなく、実際に取り組むつもりです。

 

村田

私は最近、『核廃絶に向けての日本の歴史的使命』という文章をオバマ大統領に送りました。その中で、国際タスクフォースの設立及び事故処理の国策化の必要性を訴えました。国連事務総長には、福島の教訓を学ばなければ電力会社によって世界の命運は左右されるとの警告を伝えました。そして、ケネディー駐日大使には、日米関係において核廃絶は中心的協力分野になりうると考えを伝えました。

今年は、3月に開かれるユネスコクラブ世界連盟のニューヨーク総会に私は招かれていますから、「核兵器のない世界」を唱えるオバマ大統領に、「核兵器も、原発もない世界」にまでそのヴィジョンを高めてもらうように働きかけたいと思います。核廃絶の実現には、「力」の父性文明から「和」の母性文明に変えること、そのために地球倫理を確立することが必要です。従って、国連倫理サミットの開催は核廃絶への入り口です。オバマ大統領にこのためイニシャティヴを取られるよう訴え続けます。ケネディー駐日大使は昨年末、長崎を訪問されました。大使の日本での活躍に期待したいです。

 

 高橋

お二人のご活躍に、心から期待します。さて最後に、そうした難しいことができない普通のお父さん、お母さんはどうしたらいいでしょうか。

  

川内

「忘れない」ことだと思います。忘れてはいけないことが、人生の中にあります。福島の事故は、絶対に忘れてはいけないことです。みんなが、忘れずにいたら、必ず脱原発の社会は実現できます。だから、忘れないことが、何よりもしなければいけないことです。

  

村田

福島事故が世界に示したことは、原発事故はひとつの国家、あるいは電力会社では解決できないということです。原発を多数抱えた国家の国民として、福島であるいは県外で、いまだ避難生活を強いられている14万人の方々の苦しみに、想像力を働かせてほしいということです。家やふるさと、仕事、友人などすべてを失う想像を絶する生活の悲惨さを考えてほしいです。

  

川内

私、嫁の誕生日を忘れて、めちゃくちゃ、怒られることがあります。でも、この原発事故は、ぜったい(強調)、忘れてはいけないことです。(爆笑)

 

二人の笑い.jpg

 

 

    

プロフィール村田氏②.jpg【村田光平氏 プロフィール】

                       

 

1938年東京生まれ

 

1961年東京大学法学部卒業、二年間外務省研修生としてフランスに留学。その後、分析課長、中近東第一課長、宮内庁御用掛、在アルジェリア公使、在仏公使、国連局審議官、公正取引委員会官房審議官、在セネガル大使、衆議院渉外部長などを歴任。

 

1996年―1999年、在スイス大使。2000年―2002年 京セラ顧問、稲盛財団評議員。1999年―2011年 東海学園大学教授。現在、地球システム・倫理学会常任理事、日本ナショナルトラスト顧問、東海学園大学名誉教授など。

 

オフィシャルサイト:http://kurionet.web.fc2.com/murata.html

 

 

 

プロフィール川内氏.jpg【川内博史氏 プロフィール】

                       

 

1961年鹿児島市生まれ

 

1986年早稲田大学政治経済学部卒業、大和銀行入行。1988年クロス・ヘッド株式会社取締役就任。その後、衆議院議員5回当選。

 

2011年9月、衆議院政治倫理審査会長に就任するも、同年12月の衆議院本会議で原子力協定に反対し辞任。2012年、衆議院本会議における社会保障・税一体改革関連法案の採決では、反対票を投じた。6月30日の鹿児島県連常任幹事会で「信念を持って反対票を投じたが、党の大勢とは違う行動だった」として県連代表を辞任。

 

オフィシャルサイト:http://www.kawauchi-hiros

 

 

 

end.jpg

 

Clip to Evernote