(新春対談2) 国民は何を知ったのか、知らないのか

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対談:

村田光平さん(元駐スイス大使)、川内博史さん(前衆議院議員)

司会:高橋仁也(KAZE to HIKARI)以下、敬称略

PDF:  ★新春対談 第一部・二部(2014.1.2).pdf

 

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■小説『原発ホワイトアウト』

 

高橋

『原発ホワイトアウト』という小説が話題になっています。現職の官僚によって多数の事実をつなぎ合わせて書かれたというこの本には、東電が破たん処理できない背景として、総括原価方式で貯めたお金、毎年800億円を政治家やマスコミにばら撒いて、東電の意向に沿うように誘導していると書いてあります。

その中で、長崎の落選国会議員を訪ねて、生活が大変でしょうから○○大学の講師をやっていただけませんか、と誘惑する逸話がありました。これは、驚くべき長期的な布陣の引き方です。安定した収入が将来もしっかりと約束されているから、短期的な視点に立たないということでしょう。ところで、鹿児島の川内さんのところにも訪ねて来ましたか。

 

川内

いや、いや、ないですよ。僕のところには、さすがに来ないでしょう(一同爆笑)。

 

高橋

小説の話に過ぎませんが、あのようなことは、実際はありうるのでしょうか。

 

川内

私は、そういう事例は直接訊いたことはないですね。たぶん、水面下で行われることでしょうから。ただし、総括原価方式は情報公開も迫られることもないので、そうしたロビー活動などにも使われているのは、想像に難(かた)くないでしょうね。

 

高橋

省庁は違いますが、元官僚でいらっしゃる村田さんにうかがいます。あの本の中で「神は細部に宿る」という文言があって、長く複雑な法律の中にともすると見逃しそうな『細部』にこそ、運用する官僚側が自由にできる裁量があると言っていますが、どう思われますか。

 

村田さん2-1.jpg村田

そうだと思いますね。著者は現職の官僚ですから、自分の省庁を救うために、あるいは日本を守るために、本当のことを語る「炭鉱のカナリア」になって、そのことを伝えています。この本は、今、どんどん読まれています。この影響は、国内はもちろんのこと、国外にも影響を及ぼすと思われますね。そもそも、小説の中でそうしたロビー活動をしているという『日本電力連盟』(電気事業連合会のこととみられる)が、法人格を持たず任意団体でどこの監督も受けない現状を、早急に是正する必要があることが同書で強調されております。

 

 

 高橋

心ある官僚の方と言うのは、まだ、まだ、いらっしゃいますか。

 →facebookここまで

 

 
村田

もちろんです。もともと志をもって官僚になったわけです。経産省の元官僚である古賀茂明さんを尊敬している現職者もかなりいると思います。あの本が、出版に至ったということは、それだけでもかなりそうした素地ができてきているのだと思います。

 

高橋

川内さん、東電の破たん処理について、どこかの政治母体からはっきりとした政策として、今後出てくる可能性はありますか。

 

川内

まだ、政治家も官僚も、個人的な段階かもしれませんね。なかなか、一筋縄でいかないかもしれません。ただし、少なくとも私の所属している政党(現:民主党)から、そうした主張が組織的に出てこなければいけないと思っています。

 

 

■小泉元首相の発言

 

高橋

安倍政権が再稼働の準備をすすめるなか、小泉元首相が即時脱原発をめざすべきだと安倍首相にはっきりと提言しました。このことは大きなニュースにもなり、脱原発派を勇気づけるものでした。ところで、アメリカのエネルギービジネスは現在、原発のパテント(特許)による利益構造と、シェールガスによる新しい利益構造が衝突、あるいは過渡的な交錯をしています。私は、こうした経済の競争関係が背景にあるのではと気になっています。

 

 

川内

そもそも、小泉純一郎さんのお師匠さんである新自由主義派の経済学者、加藤寛さんは脱原発を提唱していらっしゃいます。この方は、電電公社も国鉄も、解体・分離してそれぞれやればいいのだという民営化論者で、地域独占の電力会社も自由化・本来の民営化を行うべきだとして、発送電分離と脱原発を主張されています。そうした意味では、新自由主義的な文脈で小泉さんは脱原発をおっしゃっていると思います。それと、「いますぐ脱原発」という部分については賛同しますが、一方で、「最終処分場もないのに」という言葉は、最終処分場があればいいのですか、ということになる。ここは、少し気をつけていた方がいいのかと思います。しかし、社民党の福島瑞穂さんが小泉さんと対談して、それぞれの立場で頑張りましょう、とおっしゃったわけです。

 

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高橋

結論が同じであれば、尊重するということですね。村田さんはいかがですか。

 

村田

私は2004年に、当時の小泉首相と各党党首あるいはオピニオンリーダーに、日本の命運を左右するのは電力会社であるという警告を発しています。小泉元首相には首相在職中を含め15年余にわたり発信を続けて参りました。私のこうした活動は完全に無駄ではなかった、と喜んでいます。原発をやめなければいけない、という小泉氏の判断は真摯なものだと確信しています。こうした結論には感性が必要だと思います。余分な知性であれこれできない理由を述べるのではなく、これは駄目なんだ、という感性が大事です。議論などはいらないのです。

 

 

■オリンピックと放射能

 

高橋

村田さんは、オリンピックを日本で開催することについて、当初から大変問題視されて、積極的な発言されていますね。

 

村田村田さん2-2.jpg

多くの選手を迎えるにあたって、放射能は非常に重要な問題です。4号機問題という世界の安全保障を脅かす状況を抱えながら、誘致するなど無責任で不道徳であると当初から強く反対してきました。ですが私はプラス思考ですから、決まった以上、事故処理をしっかりと国策化して、全面的に最大限の努力をするしかないという立場をとっています。ところが、この立場をますます強調しなければいけなくなったのは東京都知事の問題です。国際的に見てとんでもないイメージの失墜です。これを乗り越えるため早急に事故処理を国策化し全力投球で取り組まなければ、東京オリンピックはあり得ないと思っています。

 

高橋

村田さんの、早急に国策化しなければならないというお立場とは裏腹に、このイベントが国民に嫌なことを忘れさせる機能として働くと、むしろ、国策化が遠のいていくように思いますが、川内さんはどのように考えますか。

 

川内

思いは村田さんと同じです。福島第一原発の解決なくして、オリンピックはないということです。オリンピックを政治的に利用して、国民に忘れさせようとするようなことは、これまでも、これからもたくさんあると思いますが、オリンピックを本当にやるのであれば、事故処理の国策化は不可避だと思います。

 

 

 

■子ども・被災者支援法

 

高橋

オリンピック招致の時期と重なる頃、『子ども・被災者支援法』の具体的な中身である「基本方針」が、ほとんど議論されないまま政府によって決められました。今回の「基本方針」の実態は、満場一致で可決された支援法の精神とは、すっかりかけ離れたものとなりました。これをどのように解釈し、今後、私たちは子どもたちのために、どのような運動を継続しなければなりませんか。

 

川内

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『子ども・被災者支援法』を2012年に作るとき、私は与党のワーキンググループの座長を務めていました。その骨子は、移住をしいたと言う方にはその支援をしましょう、また、将来に放射能の影響で癌が出てきたときに、因果関係を自分で証明することはできないので医療費については国が全部負担する、というものです。これを具体的にやるために政府は「基本方針」を作る、と支援法に書いてあります。今回、その支援法の通りに自民党政権は、ぜんぜん、やっていない、というのが今の問題です。この状況を変えていくには、内閣を変えるしかないと思います。

 

 

高橋

確かに政権が変わらなければ、何も変わらないというのが真実です。しかし国に期待できないその間、市民として、大人として、何もできないということにならない。チェルノブイリは繰り返せないわけです。村田さん、世界には子どもを守っていこうという文脈があります。こうした放射能と日本の子どもたちという問題に、世界の良心はどのようなまなざしを向けているのでしょうか。

 

 

村田さん2-3.jpg村田

世界も日本の子どもたちを心配して好意的な動きがあります。たとえば、ヘレン・カルディコット財団の理事長は何度も日本に来て、子どもたちを集団移住させなければいけないと言っています。他にも、スイスやハワイに子どもたちをしばらく保養させるというプロジェクトもあります。関係者から数日前にメールが入りまして、アメリカのサンディエゴのあたりで、米軍の「トモダチ作戦」で被害を受けた人たちが7万人いるとありました。その内、100人が原告となって訴訟しているようです。

 

高橋

あの短期間の間に、米軍が7万人も被害を受けたというのならば、日本の被害は計り知れないですね。

 

村田

 ヨウ素剤も飲まず甲板で作業をしていた兵士は、風の流れで放射性プルーム(大量の放射能が煙のように大気に乗って流れていく現象)にやられたなどという主張のようです。その人たちのカルテも処分されているとメールには書いてありました。

 

高橋

米軍はアリゾナの原爆実験の時から、兵士に多大な放射能被害を出し、それをすべて隠ぺいしてきましたからね。これは、相当な被害が出るのでしょうか。

  

川内

それは、出ると思いますね。福島県民健康調査ですでに26名の甲状腺癌の子どもたち、32名の強い疑いの子どもが発表されています。疫学的(統計的には)には、通常の環境では100万人に数名の子どもが甲状腺癌になる可能性があると言われています。ですから、この数値は驚くべきものです。チェルノブイリの経験(5年後くらいから顕在化)では、この数値はこれからさらに増えるでしょうし、甲状腺に限らずさまざまな健康被害が現れてくるでしょう。しかし、水俣病と同じように、政府も、加害企業も、どうにも逃げられなくなるまで、この異常な事態の放射能との相関性や因果関係を絶対に認めないでしょう。これは、国にとって不幸なことです。

 

高橋

まさしく、自民党も満場一致で賛成した『子ども・被災者支援法』に決められている、将来に放射能の影響で癌が出てきたときに、因果関係を自分で証明することはできないので医療費については国が全部負担する、ということと、まったく逆行した流れになっています。

 

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プロフィール村田氏②.jpg【村田光平氏 プロフィール】

                       

 

1938年東京生まれ

 

1961年東京大学法学部卒業、二年間外務省研修生としてフランスに留学。その後、分析課長、中近東第一課長、宮内庁御用掛、在アルジェリア公使、在仏公使、国連局審議官、公正取引委員会官房審議官、在セネガル大使、衆議院渉外部長などを歴任。

 

1996年―1999年、在スイス大使。2000年―2002年 京セラ顧問、稲盛財団評議員。1999年―2011年 東海学園大学教授。現在、地球システム・倫理学会常任理事、日本ナショナルトラスト顧問、東海学園大学名誉教授など。

 

オフィシャルサイト:http://kurionet.web.fc2.com/murata.html

 

 

 

プロフィール川内氏.jpg【川内博史氏 プロフィール】

                       

 

1961年鹿児島市生まれ

 

1986年早稲田大学政治経済学部卒業、大和銀行入行。1988年クロス・ヘッド株式会社取締役就任。その後、衆議院議員5回当選。

 

2011年9月、衆議院政治倫理審査会長に就任するも、同年12月の衆議院本会議で原子力協定に反対し辞任。2012年、衆議院本会議における社会保障・税一体改革関連法案の採決では、反対票を投じた。6月30日の鹿児島県連常任幹事会で「信念を持って反対票を投じたが、党の大勢とは違う行動だった」として県連代表を辞任。

 

オフィシャルサイト:http://www.kawauchi-hiros

 

 

 

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