(新春対談1) 国民は何を知ったのか、知らないのか

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対談:

村田光平さん(元駐スイス大使)、川内博史さん(前衆議院議員)

司会:高橋仁也(KAZE to HIKARI)以下、敬称略

PDF:  ★新春対談 第一部(2014.1.1).pdf
 

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■そもそも、なぜ原発に反対なのか

 

高橋

新年、明けましておめでとうございます。3.11からすでに1000日が過ぎ、あまりに多くのことがありました。ともすると、私たちはその細部に追われて、なぜ原発に反対するのかその原点すら忘れそうです。

新年を迎えるにあたり、今日はお二人にあらためて、なぜ反対することを決意されたのか、お伺いします。はじめに、外務省にお勤めされ国連局審議官、駐セネガル大使、衆議院渉外部長、そして駐スイス大使として、日本の外交で大変ご活躍されてきた、村田光平さんからお願いします。

 

村田さん.jpg村田

明けましておめでとうございます。実は私は早くから原発に反対しています。1999年に外務省を退職した後に、浜岡原発の全国署名運動の先駆けとなる有識者声明に参加しました。当時、スリーマイル事故以来、二十数年にわたって諸外国は原発を製造することをやめていました。ところが日本だけはそれから22基も作っているという異常な状況に、危険性の認識について日本は世界からずれていると思ったのです。

 

高橋

東電関係者以外では初めて福島第一原発の一号機に、被ばく覚悟で建屋内部に入られ、原発爆発の原因は地震ではないかと示唆された、前衆議院議員、川内博史さんはどうですか。

 

川内 川内さん.jpg                    

明けましておめでとうございます。しかし、そう口にしながらも私は胸が痛みます。それはいまだに14万人もの福島県の人たちが避難先でこのお正月を迎えざるを得ない、さらに放射能の影響としか思えないような甲状腺がんが、子どもたちに多数出てきているからです。それにもかかわらず、原発を動かす、新設するなどはあり得ないことです。

 

参考:避難者調査

福島県内90,384人(昨年12.12現在)、福島県外49,554人(昨年11.14現在)

 

高橋

福島県は、震災当時「直接死」で亡くなられた方を1,603人とし、その後避難先などの「関連死」で亡くなった方を1,604人と発表(昨年12月19日)しています。「関連死」は驚くべき数値で、津波や地震で亡くなった方をわずかながらも超えてしまいました。この内訳を丁寧に分析されるべきだと考えています。

さて、私たちは経済成長のために電力を必要とし、科学を信じて原発を容認してきた歴史があります。今回の事故はとても古いタイプの原発なので仕方なかった、さらに改良したものがあるし、あるいはもっと優れたものを開発すべきだという意見があります。こうした近代主義からの科学論についてはどう思いますか。

→facebookここまで

 

川内さん②.jpg川内

あの事故は「古いタイプの原発だから事故が起きた」と言うのであれば、事故原因を明らかにしてくださいと言いたい。原因をあいまいにしながら、古いタイプが原因だ、というのは理屈が成り立っていないのです。推進派の人たちは大変頭がいいのでしょうか、彼らの作る分厚い資料は、「○○だと・思・う」というような、責任回避がいつでもできるような表現が使われ、事実関係を断定する表現は一切ありません。ですから彼らは、同じように新しい原発でも、安全などけっして断定などしないのです。ところが、どんな原発であろうが、放射能自体はそもそも無害化できないのです。

 

村田

その通りだと思います。ドイツを代表する学術研究機関、マックス・プランク原子力研究所の元所長のハンス = ペーター・デュール博士は、「人間社会が受容できない危険を持つ科学技術は、事故の可能性が完全にゼロでなければ忘れ去るべきである」と言っています。放射能被害をもたらす原発はこれに当てはまります。ですから、そもそも原発の「安全性を高める」などと言う議論自体、はじめから意味をなさないのです。福島の事故は、そのことを立証しました。人間社会が受け入れがたい原発事故は放射能を放出する、それは一人の人間のすべてを奪い去るものであると。なぜ、人類は原子力から決別しないのか、それは真の指導者がいないからです。知性だけではだめです、感性と思いやりが新しい指導者には求められます。

 

 

■安全保障と原発

 

高橋

安倍政権が唱える「積極的平和主義」では、集団的自衛権の行使を重視しています。軍事同盟国アメリカとより連携を強めて安全保障を高める、ということがその目的だとしています。しかしそれ以前に、原発は攻撃される対象としてとても危険な気がしますが、その点についてはどうでしょうか。

 

村田

私は、原発は日本の安全保障上の重要な問題だと、3.11以前から指摘してきました。そして、福島の事故は、それを立証したと思います。いかなる核兵器よりも恐ろしい、超巨大核兵器そのものであるということです。そうではあれば、4号機問題(大量の使用済核燃料が不安定な状態に置かれている)は、もっとも窮迫した世界の安全保障問題であるわけです。にもかかわらず、従来型の安全保障論をやっているのは不可解です。

 

川内

原発の安全保障における脆弱性というのは決定的なものです。政治の分野では、これについては誰も言わない。なぜなら、テロや軍事行動からその脆弱性を回避する方法が、まったくないからです。この議論を始めると、原発がそこにあることが、そもそも不都合な事実になってしまいます。今回の原子力規制委員会による「新安全基準」には、そうしたものはまったくありません。

 

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今回の「新安全基準」では、敷地外のことについてはまったく触れていません。敷地の外には送受電網が膨大にあります。この中には、原発停止時の電力の受電ラインも含まれ、テロがこれを攻撃したならば、原発はたちまち外部電源を失いメルトダウンにつながります。そうかと言って、それらを防衛する範囲はあまりに広大になります。川内さんがおっしゃる通り、これに対処すべき方法はないのです。

 

高橋

原子力規制委員会のWebページには、委員長が報道関係者と会話する議事録が全部残っているのですが、それを見ると、委員長は私のできることは全部やっている、と言わんばかりです。「東日本の津波が来たら、健全性は保てるかと言われると、よく分からない。そういうことがないように願っていますけれども、余り難しいことを聞かないでください。朝から疲れています」(昨年10月30日、記者会見)と、かなりお疲れのようです。これ以上は勘弁してほしい、という感じですね。

 

村田

敷地内のことでも、彼らが十分な役割を果たしているとは思えません。安全が保証されていない中で、大飯原発を稼働させる規制委員会は、完全にその威信は失墜しましたね。

 

高橋

集団自衛権の観点から、アメリカは日本をどう見ていると思いますか。

 

村田

アメリカは、福島事故で脆弱性を露呈した原発を100基以上も抱えた現状に震え上がっていると思っています。簡単には戦争などできない。本当に戦争などをしてしまったら、その反撃でテロによって攻撃されることは現実的脅威です。日本も同様に脆弱ですが、集団的自衛権により日本がアメリカと行動を共にして戦争などに巻き込まれたら、テロ対象国となり、簡単にやられてしまいます。これだけ脆弱ならば、その防衛ができない。しかも、あふれ出る放射能のリスクは日本にとどまらない。このことが、3.11で世界的に周知されたわけです。集団的自衛権については、この一点をもって私は反対ですね。

 

川内

その論点は、国民の皆さんにきちんと理解してほしいですね。アメリカは先制的自衛権(防衛のために先制攻撃する権利)を行使すると言い放ち、中東などで実際にこれを行使してきた国です。ですから、日本が集団的自衛権で一緒に行動すると、日本が反撃されるわけです。

 

高橋

北朝鮮や中国に限定した安全保障に限らず、地球の裏側まで行動を共にすると、9.11のようなことが、日本の原発で起きる可能性があるわけですね。

 

川内

ドラマ『半沢直樹』ではないですが、100倍返しされるわけです。参ります。(一同、笑)

 

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■使用済み核燃料の問題

 

高橋

原子炉の核燃料は、使用・前・核燃料よりも使用・済・核燃料こそが、放射能そのものとなります。人間が近づくと10秒程度で死に至るという放射線量を放ちます。私は東電と直接電話で話したところ、「1時間あたり、数千シーベルト・以・上・になる」と回答がありました。「以上」と言ったのは、単位が千ではなく万になることもあるかと問うと、「あります」とはっきり答えたのです。現在、全国に17,000トン以上あります。使用済核燃料は原発そのものの問題からある意味独立していて、原発に反対しようが賛成しようが、あるいは原発がなくなったとしても、避けて通れない巨大な問題として存在し続けます。1000年経った遺跡は立派なものですが、これは10万年経っても、放射能を放つ悪魔の遺跡として地球上に大量に残るわけです。私は、目の前にある事故収束も当面きわめて大事ですが、これはより大きな問題だと考えています。

 

川内

最終処分方法は誰にも分からないのです。推進派も、将来何とかします、という状態です。それが分かっていながら、なぜ、また再稼働するのかを、どうしても最初に言いたいです。

 

村田

4号機の問題で、使用済核燃料が注目されてきました。これをうまく取り出したところで、また、大型共同プールに移すのでは安全ではありません。費用の制約からそれができない。本来、直接乾式キャスクに移すべきなのに、ここに『事故処理の国策化』がなされていないことの問題が象徴されております。

 

 参考:乾式キャスク(dry cask)

使用済み核燃料をプールに貯蔵するよりは、冷却水の電源喪失でメルトダウンを起こさないため、優れた貯蔵方法と言われる。内部では不活性気体でおおわれる。ただし、プールと比べてコストが高い。

 

高橋

日本学術会議は、「暫定保管」というモラトリアム期間の設定を提唱しています。これは、いきなり最終処分に向かうのではなく、問題の適切な対処方策確立のために、数十年から数百年程度は、いったん乾式キャスクなどに貯蔵しようというものです。この期間を利用して、容器の耐久性の向上や放射性廃棄物に含まれる長寿命核種の半減期の短縮技術(核変換技術)などの科学技術発展に期待したいようです。

 

参考:日本学術会議

「高レベル放射性廃棄物の処分について」

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-k159-1.pdf 

 

川内

暫定的ではあるが、今、考えうる、もっとも安全な措置を、きちんと国策として行うべきですね。それが、乾式キャスクなら、それをやるべきです。ただし、このような対応をするには、東京電力の体制・経営の問題をどうするのか、国として答えを出す必要があります。崩壊したきわめて危険な福島原発を、「発電所だから」という理由だけで一民間企業に任せるのではなく、国が管理すべきなのです。そして、実態はすでに破たんしている東電を、きちんと処理して、その後の体制を作り国策とすべきです。使用済核燃料の問題も、その延長で国策として初めて考えることができます。

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プロフィール村田氏②.jpg【村田光平氏 プロフィール】

                       

 

1938年東京生まれ

 

1961年東京大学法学部卒業、二年間外務省研修生としてフランスに留学。その後、分析課長、中近東第一課長、宮内庁御用掛、在アルジェリア公使、在仏公使、国連局審議官、公正取引委員会官房審議官、在セネガル大使、衆議院渉外部長などを歴任。

 

1996年―1999年、在スイス大使。2000年―2002年 京セラ顧問、稲盛財団評議員。1999年―2011年 東海学園大学教授。現在、地球システム・倫理学会常任理事、日本ナショナルトラスト顧問、東海学園大学名誉教授など。

 

オフィシャルサイト:http://kurionet.web.fc2.com/murata.html

 

 

 

プロフィール川内氏.jpg【川内博史氏 プロフィール】

                       

 

1961年鹿児島市生まれ

 

1986年早稲田大学政治経済学部卒業、大和銀行入行。1988年クロス・ヘッド株式会社取締役就任。その後、衆議院議員5回当選。

 

2011年9月、衆議院政治倫理審査会長に就任するも、同年12月の衆議院本会議で原子力協定に反対し辞任。2012年、衆議院本会議における社会保障・税一体改革関連法案の採決では、反対票を投じた。6月30日の鹿児島県連常任幹事会で「信念を持って反対票を投じたが、党の大勢とは違う行動だった」として県連代表を辞任。

 

オフィシャルサイト:http://www.kawauchi-hiros

 

 

 

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