私も冷却に金属を使うべきだと考えています

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立命館大学の山田先生は、水と一緒に鉛の粉末あるいは微小なボールを投入し、デブリを鉛でおおい尽そうと提案されています。小出先生、どう思いますか。

 

『崩壊熱』の冷却に水をこれ以上使うと放射能がどんどん外部に出ていくので、私も冷却に金属を使うべきだと考えています。問題は、デブリの位置です。一か所にまとまって固まっていると良いのですが、実際にはバラバラになって散らばっている可能性が高いと私は思います。

 

燃料は溶け出して、一度、液体になったものが圧力容器からダーッと流れ落ちたわけです。そのときは注水もされていたわけですから、いろいろなところからの水流があり、これが影響します。原子炉内部は猛烈な『動的環境』なのです。猛烈に流動しているのですから、デブリの一部は団子状態になっているかもしれないけれども、たぶんかなりの部分が水の中に分散にしてあちこちに流れたはずだと思います。私たちはそれをスラリーとかスラッジと呼んでいます。要するに泥水のようなものですね。そのような状態で、あちらこっちに流れていると思います。

 

山田さんは、現在、注水している圧力容器上部のパイプから、水とともに鉛の粉を流し込むと言われています。原理的には私もそれでいいと思います。ただ、原子炉の構造はそれほどシンプルではありません。配管は上に向かったり下に向かったりしていますし、途中にバルブ(弁)もあります。水を送るにはポンプが必要なわけですから、通常の水を流すポンプを使えば、ポンプは壊れます。流水で比重の高い鉛の粒を送るのも、流体力学上難しいかもしれません。

 

新しい配管は放射能が強いのでつくれませんから、今ある配管を何とか活用する必要があります。そして、どのような粉を、どの程度の流量で、どのようなポンプで送るべきかを、専門家が集まって検討する必要があります。そしてなによりも一番必要な人材は、福島のそれぞれの原発の細部の配管まで分かっている人たちです。

 

原理的には事故当初から、私もヨーロッパの方から金属による冷却を提案頂いていました。しかし、それはとてつもなく技術的に難しいことかもしれません。こんなことは、誰もやったことがないのです。

 

 

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小出先生インタビュー『崩壊熱』(後半)

 

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高橋

格納容器までメルトダウンした燃料、つまりデブリの『発熱量』はすでに200KWまで下がり、それは家庭用電気ストーブの200台分であることが分かりました。格納容器の構造について教えてください。

 

小出先生

もともと燃料があった圧力容器は、厚さ16cmある鋼鉄でできています。ところが、事故当時のデブリの『崩壊熱』が非常に高く、この16cmの鋼鉄を溶かし抜け落ちたのです。落ちたデブリは、東京電力は格納容器の中にあると言っています。格納容器の鋼鉄は厚さわずか3cmです。ただし、このフラスコのような形の格納容器の底部は、コンクリートの床張りがされて平らになっています。一番深い中心の厚さは260cmあります。その中心部分にはピットと呼ばれる小さな水槽が掘ってあります。さらに、格納容器全面を100cm以上のコンクリートでおおい、外部に放射線が飛び出ることを防いでいます。その底部は全体を支えるために760cmのコンクリートがあります。

 

(資料)

東京電力『1~3号機の炉心損傷状況の推定について』2011年11月30日

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_111130_07-j.pdf

 

 

高橋

この東京電力の資料では、デブリは格納容器の中で止まっていると、解析していますね。

 

小出先生

そうですね。図ではデブリは下部のコンクリートの床に70cmほど溶けて埋まっているように描かれています。しかし、東京電力自身が21ページの文章で「ドライウェル床面(ペデスタル外側)にも拡散」と書いているように、実際には格納容器のいろいろな部分にすでに拡散してしまっていると私は思います。

 

二人2 koide_26.jpg高橋

立命館大学の山田先生は、一定の水圧をかけた水とともに、鉛の粉末あるいは微小なボールを冷却水投入口から投入し、デブリを鉛でおおい尽そうと提案されています。非常にユニークなお考えで私たちも注目しています。

 

小出先生

そうですね。『崩壊熱』の冷却に水をこれ以上使うと放射能がどんどん外部に出ていくので、私も冷却に金属を使うべきだと考えています。山田さんの理論がうまくいくと、100トンのデブリに金属が溶けてどんどん蓄積し、200トンになり、300トンになります。結果、一定の『崩壊熱』を、量の多い金属で分散でき、外部への熱伝導も効果的になります。しかも、一方で『崩壊熱』は下がっていきますので、バランスは取れるでしょう。ところが問題は、デブリの位置なのですね。一か所にまとまって固まっていると良いのですが、実際にはバラバラになって散らばっている可能性が高いと私は思います。

  

 

  

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高橋

どうしてバラバラになるとお考えですか。

 

小出先生

燃料は溶け出して、一度、液体になったものが圧力容器からダーッと流れ落ちたわけです。そのときは注水もされていたわけですから、いろいろなところからの水流がありこれが影響します。後に、東京電力がファイバースコープ(カメラ)を入れて内部を見たら、一面水蒸気で充満していて上部からは滝のように水が流れていたと言っています。つまり、原子炉内部は猛烈な『動的環境』なのです。猛烈に流動しているのですから、デブリの一部は団子状態になっているかもしれないけれども、たぶんかなりの部分が水の中に分散にしてあちこちに流れたはずだと思います。私たちはそれをスラリーとかスラッジと呼んでいます。要するに泥水のようなものですね。そのような状態で、あちらこっちに流れていると思います。

 

高橋崩壊熱②ブログ用2.jpg

山田先生のアイディアは、デブリは下部にまとまっているのでそこに鉛の粒が沈殿する、そして一定量のデブリの『崩壊熱』は熱がたまりやすく、やがて高熱となり、鉛を溶かして全体をおおうことができる、こうした理論だと理解しています。

 

小出先生

確かに、デブリがまとまっていると『崩壊熱』が蓄積され温度が高くなりやすいです。しかし、前半でも言いましたように、熱というものは「与えられた熱」と「出ていく熱」の差分で決まりますので、小さなデブリでも「出ていく熱」が小さければ熱はたまり、再度デブリが熔けてしまう可能性もあります。いまは、投入した鉛などの金属がデブリにうまく到達できるかどうかがカギになりますので、仮に小さなデブリになっていたとしてもそこに鉛などを到達させることができるなら、鉛が熔けてデブリの冷却を容易にできるかもしれません。検討すべきことは、バラバラな状態になったデブリにどのように金属を到達させるかということです。

 

高橋

では、どのように金属をデブリに運んだらいいですか。

 

小出先生

山田さんは、現在、注水している圧力容器上部のパイプから、水とともに鉛の粉を流し込むと言われています。原理的には私もそれでいいと思うのですが、実は原子炉の構造はそれほどシンプルではありません。配管は上に向かったり下に向かったりしていますし、途中にバルブ(弁)もあります。水を送るにはポンプが必要ですが、通常の水を流すポンプを使えば、ポンプは壊れます。流水で比重の高い鉛の粒を送るのも、流体力学上難しいかもしれません。少なくとも今の施設ではだめだと思います。

  

  

 

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 高橋

かなり特別な施設を検討しないといけないですね。

 

小出先生

新しい配管は放射能が強いのでつくれませんから、今ある配管を何とか活用する必要があります。そして、どのような粉を、どの程度の流量で、どのようなポンプで送るべきかを、専門家が集まって検討する必要があります。

 

崩壊熱②ブログ用3.jpg高橋

金属を冷却に活用するには、山田先生のアイディアを技術的に検討すべきだと思いますか。

 

小出先生

当面は、私はそうだと思います。私は原子核工学の専門家です。流体力学の専門家や金属の専門家、そしてなによりも一番必要な人材は、福島のそれぞれの原発の細部の配管まで分かっている人たちです。設計図通りでないかもしれない。当時つくった人たちが必要です。そうした専門家が集まって徹底した検討が必要です。しかし、それはとてつもなく技術的に難しいことかもしれません。こんなことは、誰もやったことがないのです。原理的には事故当初から、私もヨーロッパの方から金属による冷却を提案頂いていました。しかし、原理と実際は大きな距離があります。

  

 

 

 

高橋

仮に技術を試行錯誤したとして、最後に政治的な決断ができるかどうかを心配しています。リスクを背負って決断できるのかと。

 

小出先生

政治のことですから私には分かりません。ただ言えることは、私が事故当時から遮水壁の提案をしても、一切、取り入れられなかったのです。ただし、今は地下水だけではなく、水と放射性物質を遮断することを全体として考えなければいけない段階に入っています。

 

高橋

最後にお聞きします。事故当時に考えられたことと、今の状況は悪くなっていますか、それとも良くなっていますか。

 

小出先生

遮水壁を含めて、事故の進捗に合わせて私は色々なことを提案してきました。それを採用して頂いていれば、今ほどひどくなってはいなかった。しかし、それは些末(さまつ)なことなのです。仮に私の提案がすべて受け入れられ実現されていたとしても、これから何十年、何百年にも亘って、この事故と向かい合わなければいけない。それは、とてつもないことなのです。原子力発電所を作った時から、とてつもないことは、すでに始まっていたのです。

(終)

 

 

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