水を使って冷却するのは、もうやめる段階に来ている

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KAZE to HIKARIが独自に、東京電力から取材した1、2、3号機の溶け出した核燃料(デブリ)の『崩壊熱』データがあります。小出先生、『崩壊熱』は急速に低下しています。

 

■小出先生

ウランを核分裂させると『核分裂生成物』というものが生まれます。これはおよそ200種類におよぶさまざまな放射性物質の集合体で、最初のウランより約1億倍の放射能を持っています。そして、100万kWの原発一基を1年運転させる毎に、放射性物質は広島に投下された原爆の優に1000発分を超える量が生まれます。

 

重い物質は陽子と中性子のバランスが合わないことが起こりがちで、不安定です。これを放射性物質と言い、これらは安定しようとして余分なエネルギーを吐き出し、放射線を出します。これを『崩壊』と言います。このとき発生する熱が『崩壊熱』の正体なのです。

 

『崩壊熱』が下がるのは、冷却水とはまったく関係ありません。『崩壊熱』は原子核が持っている性質で出てくるので、水でその量を増やしたり減らしたりすることはできないのです。これは、放射線となって余分なエネルギーを吐き出す、半減期と一体だと考えてください。これまでは、水で熱を外部に運び出しているだけです。

 

グラフの数値は、たぶん妥当です。事故前に原子炉の中にあった燃料棒の状態を知っているのは東京電力だけですから、彼らしかこの計算はできません。

 

200kWというのは電気ストーブが200台、これが格納容器の中にあるということです。運転時は、標準的な発電100万kW(2、3号機)だと、電気ストーブは3,000,000個発熱していることになります。運転を止めた瞬間(事故なども)は、それでも『崩壊熱』がありますから熱量は核分裂時の7%まで下がります。それは210,000個の電気ストーブです。ところが一日たつと、この『崩壊熱』は約10分の1まで下がります。1年たつとそのまた10分の1に減りますし、現在は200台になったわけです。

 

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小出先生インタビュー『崩壊熱』(前半)

 

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高橋

1、2、3号機の圧力容器から溶け出した燃料、つまりデブリがどのようなモノなのかイメージできません。3号機には、事故当時95トンの燃料があったと東電は言っています。これは、かりにすべてウランだとして比重(水の19倍)を考えると、1立方メーター(縦横高さ1m)で19トンになりますから、これがおよそ5個あると考えられます。完全な球体に換算すると直径2m強になります。3号機格納容器の底部の直径は20mです。さて、デブリというものはどのような成分ですか。

 

 ※デブリとは~ 「破片」の意のフランス語。ここでは、溶け出した核燃料(他のものが混じっているが)を言う

(資料:『福島第一原子力発電所 設備の概要』東京電力)

http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/intro/outline/outline-j.html

 

小出先生

もともと、原発の燃料は二酸化ウランです。これはウランを瀬戸物のように焼き固めたものです。ウランを核分裂させると『核分裂生成物』というものが生まれます。これはおよそ200種類におよぶさまざまな放射性物質の集合体です。セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素131というようなものが混然一体となって含まれています。100万kWの原発一基を1年運転させる毎に、放射性物質は広島に投下された原爆の優に1000発分を超える量が生まれます。

 

高橋

原子炉の中でウランの連鎖的核分裂(臨界)をおこさせると、約200種類もの放射性物質がどんどん生まれるのですね。さて、その状態で事故が起き核分裂は止まります。ところが、すでに生成されてしまった約200種類の放射性物質は、今度は何もしなくても自然に『崩壊』を始めます。それについて教えてください。

 

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原子は原子核と電子から成り立っています。一番シンプルなものは水素で、その原子核は陽子と呼ばれる素粒子1個で構成されています。その原子核に中性子を1つ加えると、重さが約2倍になり、重水素と呼ばれる水素ができます。陽子と中性子の数をどんどん増やしたものが他の元素の原子核になります自然界ではウランが一番重い物質です。重い物質は陽子と中性子のバランスが合わないことが起こりがちで、不安定です。これを放射性物質と言い、これらは安定しようとして放射線を出します。これを『崩壊』と言います。

 

高橋

放射性物質が放射線を出し続けて、その量が半分になることを『半減期』と言うことは、事故のおかげで良く知られました。

 

小出先生

核分裂するウラン235の『崩壊』の半減期は7億年で、核分裂をしないウラン238は45億年経たないと半減期を迎えません。実は、ウランはゆっくりしか放射線を出さないというものなのです。ところが、これをいったん核分裂させると半減期の短い、つまり大量の放射線を出す放射性物質を生み出します。これらは、最初のウランより約1億倍の放射能を持っています。

 

 

 

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 高橋

つまり、私たち人間はわざわざ原子炉を使って、1億倍の放射能を持つ物質を作りだしたのですね。原子炉は放射線製造機だった。そして、「絶対に壊れない原子炉」が壊れて、放射性物質が漏れ出しました。このデブリは、放射線とともに『崩壊熱』を出しています。

 

小出先生

先ほど放射性物質は不安定と言いましたが、これは余分なエネルギーを持っているからです。物質は安定するためにこの余分なエネルギーを吐き出します。これが放射線です。しかし、自然界ではすべてのエネルギーは最終的には熱になります。そして、この熱が『崩壊熱』の正体なのです。

 

高橋

1,2,3号機に毎日400トンあまりの水を注入しています。これは、デブリの熱を冷やすためだと思っていましたが、『崩壊熱』自体を水でコントロールすることはできないのですね。

 

IMG_96116.jpg小出先生

そうです。水はまったく関係ありません。『崩壊熱』は原子核が持っている性質で出てくるので、水でその量を増やしたり減らしたりすることはできないのです。これは、放射線となって余分なエネルギーを吐き出す、半減期と一体だと考えてください。放射線、つまりエネルギーが全部出るまで待つしかありません。

 

 高橋

水を注入する理由を教えてください。

 

 

 小出先生

熱というものはたまります。正確にいうと、「与えられた熱」と「出ていく熱」の差分がたまります。格納容器の中に、『崩壊熱』を出すデブリがあると、いくぶんかは容器を伝わって「出ていく熱」があります。しかし、「出ていく熱」の量が「与えられた熱」より少ないと、どんどんたまっていきます。そのままにしていると、デブリはたまった熱で格納容器からメルトスルー(格納容器に穴をあけて落ちる)してしまいます。そこで、水で熱を外部に運び出し、「出ていく熱」の量を増やしているのです。

 

 

 

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高橋

ここに、KAZE to HIKARIが独自に、東京電力から取材した1、2、3号機の『崩壊熱』データがあります。2011年から1年ごと(10月時点)に急速に低下しています。2014年の予測値もあり、急速に低下していることが分かります。先生から見て、このデータの妥当性はいかがですか。

 

小出先生

この数値は、たぶん妥当です。事故前に原子炉の中にあった燃料棒の状態を知っているのは東京電力だけですから、彼らしかこの計算はできません。これをパッと見たところ、たぶん正しいでしょうし、異常なものではありません。1号機と2、3号機に数値の差があるのも、発電出力の違いがありますから妥当です。

 

高橋

すでに、200kW程度まで下がっています。この数値を分かりやすくご説明してください。

 

小出先生

たとえば家庭で使う電気ストーブは、それはおおむね1kKWです。ですから、200kWというのは電気ストーブが200台、これが格納容器の中にあるということです。正常の運転時は、標準的な発電100万kW(2、3号機)だと、原子炉内部での発熱は電気になる量の3倍必要で電気ストーブは3,000,000個発熱していることになります。運転を止めた瞬間(事故なども)は、それでも『崩壊熱』がありますから熱量は核分裂時の7%まで下がります。それは210,000個の電気ストーブです。ところが一日経つと、この『崩壊熱』は約10分の1まで下がります。1年たつとそのまた10分の1に減りますし、現在は200台になったわけです。

 

高橋

それでは水を止めてもいいですか。

 

小出先生

それは、「与えられた熱」と「出ていく熱」の差結.jpg分で考える必要があります。ストーブ200台でも熱がたまるのなら冷却は必要です。ただし、水は熱を外部に運びますが、同時に放射能まで運びだしているのです。ですから、冷却のためにこれ以上水を使うことは限界です。当初ウランの1億倍の放射能を持っていた核分裂生成物のうち寿命の短い放射性物質はすでになくなってくれており、『崩壊熱』はかなり下がりました。水を使って放射能を環境に運び出すことは、もうやめる段階に来ているのです。そして、200台の電気ストーブの熱を、水以外の方法で冷却することを検討をすべきです。

(次回、後半に続く)

 

 

 

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