鉛で、汚染水を発生させず、放射線も低下させる方法

Clip to Evernote

 

 

ラジエターとは必要のない熱を外部に放熱する装置で、クルマのエンジンを冷やすのにも使います。山田教授のアイディアは、水で冷やすのではなく、熱の伝わり方が水の10倍もある鉄でできた格納容器そのものを、空冷ラジエターとして使います。

 

山田教授は原子核物理、加速器、放射光の専門家で、特に量子力学の分野できわめて優れた実績があります(略歴などは下記)。

 

●手順

①一定の水圧をかけた水とともに、鉛の粉末あるいは微小なボールを冷却水投入口から投入します。鉛は水流にそって圧力容器、格納容器、そして破損口から外部に流れます。この過程で水より重たい鉛は、溶けた核燃料に落ち、全体を少しずつおおいます。

 

②おおいかぶさった鉛の量が増えて、燃料が水と接触しなくなると燃料の温度が上がり、鉛は溶けだし(300℃程度で)さらにスムーズに燃料全体をおおいます。この段階でも、放射能が冷却水に移る割合が減るでしょう。

 

③燃料の量と、鉛の量が理想的な状況になると、水を止めます。すると比熱(温度を上げる必要なエネルギー)が小さい鉛は、熱を効率よく格納容器(鉄)に伝えます。鉄も比熱が小さいので、格納容器全体から放熱がおきます。夏でも格納容器の温度が200℃以下で平衡状態に達します。つまり温度はそれ以上には上がりません。冬場とか雨が降れば40度以下でバランスします。

 

●メリット

1)冷却水(地下水と別に400トン/日)による汚染水がなくなる

2)上記汚染水がなくなると、地下水の汚染も激減する

3)空冷なので維持費が掛からない

4)鉛によって放射線が遮断される

5)核分裂の連鎖反応を起こさせる水がないので安全

6)100トン程度の鉛を投入するだけなので安価

 

政府・東電は、いまだ具体的な対策を何ら用意できません。日々、危険が急速に拡大しています。山田教授はこのアイディアを2011年6月11日から政府に訴えているのです。

 

 

山田理論(最終).jpg

 

 

 

 

 

 

ヘッド4.jpg

 

水を使わなくても、冷却できます

 

高橋

まず、このアイディアの根幹は『鉛を使う』というよりも、格納容器全体を、『溶解した燃料の冷却ラジエターにしよう』ということだと理解しました。教授は、鉄でできた格納容器の表面積の一部である30平米(実際は完全な球体で計算すると380平米程度ある)の放熱効果で、厳しめに見ても200度の平衡状態が得られると計算されています。つまり、水による冷却は必要ないということですね。理論は後ほどにしまして、最初に手順を説明していただけますか。

 

山田教授図1.jpg

おっしゃる通り、これは格納容器そのもので冷却する方法です。ただし、いきなり水を止めると、燃料と鉄の接点が限定され、放熱よりも鉄の融解が起きてしまいます。これを回避するためには、格納容器と接触する面積を大きくして熱の伝導をゆるやかにさせる必要があります。これに『鉛』を使います。最初に一定の水圧をかけた水とともに、『鉛』の粉末あるいは微小なボールを冷却水投入口から投入します(図1)。『鉛』は水流にそって圧力容器、格納容器、そして破損口から外部に流れます。この過程で水より重たい『鉛』は、溶けた落ちた核燃料に堆積し、全体を少しずつおお
います。

 

高橋
『鉛』である必要はありますか。他の金属ではどうですか。

 

山田教授図2.jpg

『鉛』は、融点(溶ける温度327.5°C)が低く、格納容器の鉄が溶ける前に(1538°C)溶けてしまいます。しかも放射線を遮断する効果が一番高いので、もっとも理想的なのです。ただし、重すぎて格納
容器が持たない場合にはスズやアルミなどとの合金も考えられますが、放射線を遮断する効果は低下します。また、有毒な鉛が蒸発する危惧もあるようですが、格納容器に遮断されているのでそれほど危険だと考えていません。

さて、徐々におおいかぶさった鉛の量が増えてくると、燃料が水と接触しなくなります。すると燃料は崩壊熱で温度が上がり、鉛は溶けだします。液体になった鉛は、スムーズに燃料全体をおおいます。この段階でも、放射能が冷却水に移る割合が減るでしょう(図2)。

 

高橋

汚染水の元凶は、地下水のような印象を持っている方もいます。しかし、水は二系統あって、ひとつは地下水が一日400トン、もう一つが燃料の温度をあげないように冷却水が事故当時から毎日300~400トン注入されています。格納容器に燃料が残っているとすると、この冷却水が燃料と接触して汚染水の元凶になっており、これが普通の地下水と混ざっていると考えられます。

 

山田教授(図3)鉛から格納容器全体に熱が伝導.jpg

私は、このアイディアを事故が起きた2011年6月11日から政府に提案しています。なぜ水で冷却するのか。なぜ水で放射能を外部に持ち出すのかと。放射能を持ち出したら汚染が広がるばかりです。

水を使わなくても冷却できます。鉛の量と燃料の量が、理想的な状況になると、水を止めるのです。すると比熱(温度を上げる必要なエネルギー)が小さい鉛は、大きな面積で熱を効率よく格納容器(鉄)に伝えます。鉄も比熱が小さいので、格納容器全体から放熱がおきます。夏でも格納容器の温度が200℃以下で平衡状態に達します。つまり温度はそれ以上には上がりません。冬場とか雨が降れば40度以下で安定します(図3)。

 

 

鉛で、核分裂による不測事態の心配はない

高橋

ご説明ありがとうございます。ところで、以前から非常に疑問に思っていたことがあります。普通、火事が起きると水をかけます。ですから、事故当時ははやく水をかけろ、と思っていました。しかし、勉強してみると通常の運転時に原子炉で水を使うのは核反応を促進するためだ、と知りました。つまり、汚染水が増えるという問題とは別に、冷却に水を使うということは火に油を注いでいるのではないかと。

 

山田教授

ウランから出る中性子は非常に大きなエネルギーを持っていますから、そのままでは近くのウランとうまく連鎖反応をする間もなく外に飛んでいきます。この中性子の速度を落とすために減速材として水を使います。水を構成する水素は、中性子の速度を減速させ、核分裂を促すのです。ですから水は冷却材と減速材というふたつの性格があります。一刻も早く、水による冷却はやめるべきです。

 

高橋

ところで、ウランの核分裂の中に、他の金属を入れると、別の核分裂が起きて不足事態は起きませんか。

 

 

写真②.jpg山田教授

鉛という物質そのものは核分裂しません。また、先ほどの話で減速材は核分裂を促進しますが、減速材は軽い物質である必要があります。鉛は重たいので、減速材の役割を果たせません。もちろん、中性子が発生したら鉛に限らず、すべてのものは放射化します。しかし、これは核分裂ではありません。鉛で核分裂による不測事態を心配する必要はありません。

 

 

 

高橋

汚染水が大きな問題となって、それは今になって急にどこからか事故に乗じて地下水がやってきて、これが原因というイメージですが、地下水は事故前からあります。原発には『サブドレン』というものを建屋周辺に設置しています。これは建屋底部への地下水の流入の防止や、建屋に働く浮力の防止を目的として、ポンプで地下水をくみ上げ、地下水位のバランスをとります。事故前には、1号機から4号機のサブドレンで、約 850 立米/日の揚水を行っていました。これが、稼働することができなくなって新たに井戸を掘削しているのですね。ですから、地下水はあらかじめ与えられた条件です。むしろ汚染水を作る元凶となっている冷却水を使うことはやめるべきですね。

 


 

遮水壁で周辺を囲むより、燃料そのものを囲む

 

山田教授図4-a2.jpg

この方式は、仮に溶けた燃料が格納容器を突き破り、さらにコンクリートを抜けて、完全にメルトスルーしていた場合でも、効果が期待できます。燃料自体は非常に重たいので、バラバラに落ちてもどこかで集まりひとつの塊になっていると考えられます。ここに鉛が沈殿すると格納容器の中と同じように鉛は液体になります。この鉛が燃料を包み込んで、地下水との直接的な接触を回避することが期待できます。遮水壁で建屋の周辺を囲むのではなく、燃料そのものを鉛で囲みます(図4-a)。

 

高橋

ウランは鉛より重たいですから、鉛は燃料の上部にしか溜まらないのではないですか。

 

山田教授図4-b2.jpg

ウランは液体状態にはなっていません。ウランの融点(1132°C)を考えても、少なくとも現在は、水で冷やされているので個体で存在すると思います。鉛はウランに接触すると、すぐに液体になりますので、流れるようにウランを包み込むでしょう。地下水への放射能の移転は激減するでしょう(図4-b)。


高橋
 

教授、燃料の位置を特定する必要がありますね。

 

山田教授

宇宙を観測するのにX線を使う技術があります。

 

高橋

ガスなどの遮蔽物がたくさんあって、天体望遠鏡では決して見ることができない天の川銀河の中心を観測し、巨大なブラックホールがある、ということを見つけた技術ですね。

 

山田教授

その技術を使うと、強烈なX線を放つ核燃料の位置が分かると思っています。JAXA(宇宙航空研究開発機構)の方が、汚染地域をこのX線カメラで見て、放射能のありかを特定しています。物理学会誌に発表していました。解像度は期待できませんが、位置の特定はできると思います。

 

高橋

さて、一番面倒な計算の話ですが、その前提は

1)100トンの核燃料が、圧力容器あるいは格納容器の鉄の中にある
2)その崩壊熱は1MW(メガワット)である

となっています。

 

山田教授

写真③.jpg

私はこの計算はかなり厳しめにやっています。空気中への放熱だけを計算し、物質から物質に伝わる熱伝導は省いています。実際には、たぶん200℃ではなく、100℃もいかないと思います。これはきちんとシミュレーションできます。どのくらい重さに耐えるのかという構造計算も必要です。重すぎるときは合金を検討すべきです。

 

 

  

 

 

★山田教授が主催する

『民間福島原発事故収束委員会』からの呼びかけ

http://blog.goo.ne.jp/minnkannjikosyuusokuiinnkai

 

民間福島原発収束委員会は、上記で説明しました方式を政府及び東電に理解させ、早い時期に実現させるために設立しました。収束委員会は超党派で運営し、参加者が自らの手で原発事故から人と自然を守るために活動することを保証するために設立しました。

 

参加者は原発を収束するために研究及び広報活動を行います。より多くの人が参加すれば、より正確な判断ができるというのが、民間方式の意義です。放射能・放射線事故から自らを守る市民の立場で、市民の安全確保と健康を目的として、事故処理に対する監視と有益な理学・工学的・社会的な知見を政府、東京電力をはじめ事故処理にあたる諸機関に働きかけ、迅速な措置を求めます。

 

活動への参加希望者は、お名前、連絡先(e-mail、電話、住所)、年齢、性別を入力のうえお送り下さい。賛同するだけもご友人にお知らせくださるだけでも歓迎です。数が力になりますからお名前をいただけますように。会費は不要です

shuusokuiinkai@yahoo.co.jp

 

発起人:山田廣成(新方式の発明者、立命館大学教授)、上原正勝(元大阪原子力安全管理事務所所長)、月谷小夜子(日本ペンクラブ会員)

 

 

 


RIMG103822.jpg
 

■山田廣成(ひろなり)氏の略歴

1946年 名古屋市瑞穂区に生まれる(66歳)

1970年 名古屋大学物理学科卒業

1975年 名古屋大学原子核工学研究科博士課程修了

1973~1976年 東大原子核研究所にて核構造研究

1976年 博士号取得

1976~1982年 オークリッジ国立研究所

1983年 オーストラリア メルボルン大学物理学科

1986年 住友重機械工業・量子技術研究所

1993年 立命館大学理工学部教授に就任

1997年 ㈱光子発生技術研究所設立

2002年 文科省21世紀COE拠点リーダーに就任

2007年 科学技術分野における文部科学大臣表彰を受賞

2011年 ㈱光子発生技術研究所 代表取締役就任

 

●所属学会

物理学会会員。自由電子レーザー研究会、原子力学会加速器部会、加速器学会年会、放射光学会年会、それぞれ組織委員。

 

 

 

end.jpg

 

Clip to Evernote