映画『朝日のあたる家』の山本太郎さん、演技を超えて心のさけび

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静岡県、湖西市。60キロ離れた原発が爆発。避難勧告。いちご農家を営む平田家の家族は避難。一日で帰ると思っていたが、何カ月も避難所暮らし。父は職を失い、母はノイローゼ、妹は鼻血を流し、やがて病気になる。山本太郎さんも出演、映画『朝日のあたる家』の太田隆文監督にうかがいました。

 

僕はこの映画を作る前、ある取材で日本の原発54基すべてを見てきました。福島第一原発は上空からでしたが。原発は「人里から離れているので、安全です」みたいな話がありますが、それは嘘です。住宅街、漁村、海水浴場が隣接する場所にも建っていました。

 

原発がいかに危険か?を理屈で説明しても、理屈で反論される。放射能の影響の話になると、何十年もしないと結論が出ない。でも、映画というのは感動すると一生心に残る。人生が変わることもある。山本太郎さんがデモの先頭に立ち、小出裕章先生が専門家として知識を発信し頑張っているなら、僕は映画で人の心に訴えて行こう、と思ったのです。

 

戦後、日本人はモノがたくさんあることが『幸せ』だと信じてきました。でも、女子高生がケータイでメールを一所懸命しているのは、モノではなく、無意識に『絆』を求めているからです。その方法が分からないから機械=モノを通じて行っています。

 

そのモノを支えているのが電気=原発。その原発の存在が今、崩壊しようとしている。これはモノがたくさんあることが幸せ、という考え方の崩壊でもある。モノより『絆』が大切です。なのに、そのモノ=原発によって今、多くの『絆』が踏みくだかれている。

 

今回は編集しながら何回も泣きました。山本太郎さんやいしだ壱成さんは「セリフ追加していいですか?」と言い出す。泣く芝居ではないのに、涙があふれる。ほかの役者さんもすごかった。みんな芝居じゃない、セリフでなく自分の言葉だ。スタッフもみんな、泣きながら撮影した。完成披露上映会では、3千人が涙した。心の叫びは必ず広がる。僕は、そう信じたい。

 

 

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太田隆文監督のインタビュー

  

日本中にある54基の原発すべてを見てきました

  

太田監督

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映画「朝日のあたる家」の舞台となった静岡県湖西市では、すでに完成披露上映会をして、3000人が見に来てくれました。が、東京の映画館上映で大きな壁にぶつかっています。大手映画館チェーンでは、題材が原発事故なので上映拒否。独立系の映画館からは「年内の上映は全て決まっているので駄目」と言われています。地方の映画館には「東京で上映していない作品はできない」と言われ、八方塞がり。原発事故に対する関心がどんどん下がっているので、少しでも早く上映せねばならないのに苦戦しています。ただ、製作資金を集めるときも、映画会社もテレビ局からも「原発が題材の作品は出資できない」と言われました。けど、市民からの寄付という形で製作費を集め、無事に完成することができました。必ず何か方法はあると思っています。

 

高橋

では、監督の映画をみんなで見ようという運動をして、これだけの人が集まりますよ、とすれば上映が早まりますね。そいう運動をしたいですね。

 

太田監督

それは、とてもありがたいお話です。僕はこの映画を作る前に、日本中にある50基の原発すべてを見てきました。それから、チェルノブイリに行き、福島第一原発を空から見ました。

 

高橋

原発54基すべてを見た人など、ほとんどいないのではないですか。一番印象に残ったことは、何ですか。

 

太田監督

すぐそばに、住宅地があるということですね。高速増殖炉もんじゅにも行ったのですが、民家があって、どん、と爆発したら、あれは逃げても間に合わないですよ。原発は「人里から離れているので、安全です」みたいな話がありますが、嘘です。人がたくさん住んでいて危険なところに、実はいっぱい建てているのです。

 

 

 

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映画

「朝日のあたる家」

予告編

https://www.youtube.com/watch?v=k8Npg3bUecI

 

 

 

  

 

 

 

映画は人の人生を変えてしまう

高橋

山本太郎さんも映画に出ていますね。

 

太田監督

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ええ、まずは何とか参院選に当選してほしい。たぶん、今回はいける!と、僕は思います。よく彼のことを、原発に反対して仕事をなくした人の代名詞のように言いますが、それは違います。確かに芸能界の仕事は減りましたが、全国から来てほしい!と凄い数のラブコールを受けていて、とても大きなファン層を得ています。むしろ、以前よりも人気があるかも(笑)。太郎さんで思い出すのは、「朝日のあたる家」の打ち合わせをしたとき、「もし、日本中の映画館に上映拒否されたら、DVDにして渋谷駅前でみんなに配ります!」と言ったら、太郎さんも「僕も一緒に配ります!」と言って、二人で盛り上がりましたた(笑)

 

高橋

監督はこれまで「親子につたえたい」というコンセプトで、どちらかと言うと、やさしくて暖かい映画を作ってきました。今回の、原発の問題を映画にしてしまう、という選択はどうしてですか。

 

太田監督

これまでやってきた「親子につたえたい」ということの中で、原発事故をきっかけによく考えると、一番大事なことは、子どもの成績が悪かろうが、親より早く死なない、とにかく生きているということが大事なんだ、これだ、と思いました。

色々な表現手段があります。理論的な議論をしていると、やはり理論でかえってくる。相手がひとつの立場にこだわっていると、いつまでたっても議論が続く。映画というのは面白いもので、ある映画に感動すると、そのことが一生心に残っている。テレビでどんなに感動しても、去年のドラマは誰も覚えてはいません。映画は人の人生を変えてしまうほどの感動を僕たちにあたえてくれます。だったら、太郎さんがデモの先頭に立ち、小出先生が理論で頑張っているなら、僕は映画で人のこころに訴えて変えてやろう、と思ったのです。しかも、一気に1000人に見てもらえます。

 

高橋

監督は商業的な映画をこれからもたくさん作られると思いますが、原発の映画をつくることで、ご自身に色がついて仕事がやりにくくなるとは考えませんでしたか。

 


僕は2.jpg太田監督

散々、先輩たちから言われました。「お前は二度と商業映画を撮れなくなるぞ!」。でも、僕は映画を作るときに、いつもこれが遺作なんだ、と考えています。そうしたら前回の映画で、医者から「休まないと過労死するぞ!」と、警告されて。本当に東京公開が終わった直後に倒れて、半年寝たきり生活。あのとき死んでもおかしくなかった。生き残ったのは神様が「もう1本、映画を撮れ」といってるんだと思えて。その時に3.11を迎えたのです。それが「原発事故」であり、日本人として絶対に伝えねばならない問題だと思えました。次はないと思っているので、今後の不安はないんです(笑)。

 

 

モノの価値観に支配される社会の崩壊だと思います

 高橋

家族の『絆』は幸せな時は自覚できない、むしろ戦争のような不幸な時にはじめて自覚できる、と監督はおっしゃっています。それならば、普段の「幸せな時」というものは、いったいなんなのでしょうか。

 

太田監督

実は、今の『幸せ』は本当の幸せではないということです。戦争に負け、アメリカ人がモノに囲まれた豊かな生活をしているのを見て、モノにあこがれたというのが原点になっています。今の女子高生がケータイをもって、メールを一所懸命しているのは、無意識に『絆』を求めているのですが、その方法が分からないから機械、モノを通じてそれをおこなおうとします。モノを媒体としてしか、『絆』を確認できなくなっているのですね。昔は、小さな部屋で家族が寄り添っていた、しかし、お父さんは子どものために部屋を作ってやるが、今度は娘がケータイで援助交際をしていても分からない。よかれと思ってやったことが、ぜんぶ、あだとなっている。

 

高橋

いまモノから通信のお話になっています。そうした活動は電気で行われます。私たちの生活は電気が支えている。監督が戦争になったら降伏したら終わる、でも放射能との戦争は終わらない、と発言されています。偽りの『幸せの時』の基盤は電気で支えられている、しかも、そこには原発があった。これは、もっと深刻ではないですか。

 

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モノを支えているものが電気であった、その中に原発がある、それが崩壊した。このことは、モノの価値観に支配される社会の崩壊だと思います。原発事故そのものの問題ではなく、日本の戦後価値観の崩壊だと思うのです。もしかすると、日本人を気づかせるには、戦争では足りない、と神様が今回の事故で試されているのではないかと思うほどです。モノの反逆というか、自分たちが幸せになれると信じていたものに、自分たちがつぶされている。

 

高橋

僕は、原発は単に機械ではなく、交付金など政治的につくられた社会システムだと思っています。小出先生とお話したときに、今回の事故でこれほどのことが起きたのに、もう何ごともなかったように人々は以前の生活に戻っている、もっと過酷な事故が起きても分からないかもしれません、と録音機を切った後に先生がつぶやかれました。このとき、とてつもなく僕はつらかったです。大事故でもなく、議論でもなく、大事なことは人間とは何か、人間の幸せとは何かまで戻らないと、結局、人は分からないと思うのですね。

 

太田監督

まさに、そこなのです。そう思ったから映画を作ったのです。何の罪もない家族、お父さんがイチゴ農園をやっていて、大学生のお姉ちゃんと中学生の妹がいて、何も悪いことなどしていないのに原発事故が起きて、どんどんひどい思いをしていく。家を失い、仕事を失い、学校に行けなくなり、友だちと別れ、子どもたちが病気になっていく。ぜんぶ福島であったことを取材して映画にしました。論理ではなく、子どもがこんなことになっちゃいけない、と絶対に感情で伝わると思うのですね。日本人はこのことを実感できれば、僕は変わると思うのです。

 

高橋

シナリオは いただいて読んだのですが、本当に監督の映画を見たいですね。そう思われている方は、たくさんいると思います。

 

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太田監督

撮影現場での山本太郎さんやいしだ壱成さんは、もう本気! ほかの役者さんもものすごかった。みんな演技じゃないですよ、台詞ではなく彼等自身の言葉としか思えない。子を思う父の言葉。母の言葉。太郎さんは「このシーンは、この言葉も入れたいんですけど!」と言い出すし、本番中、病気になった姪を見舞うシーンで涙をこぼすんです。泣く場面でないのに。ああ、これは芝居じゃない、心の叫びなんですね。スタッフもみんな、泣きながら撮影していました。

  

 

高橋

山本太郎さんの選挙も頑張ってほしいです。そして、ぜひ上映のために応援をしたいです。

 

太田監督

太郎さんは、きっと当選します。僕も日本全国で「朝日のあたる家」を上映できるようにがんばります。どーしても駄目なときは、太郎さんとDVDを配ります(笑)

 

高橋

では、その時は一緒に配りましょう(笑)。今日はありがとうございました。

 

 

太田隆文監督のブログ

http://cinemacinema.blog.so-net.ne.jp/


 

 

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