小出先生、歩くの速すぎです

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京都大学原子炉実験所は、大阪の南部にあります。受付から研究室に向かう長い道の先に、左手に原子炉、右奥に研究棟。私たちは道すがら、小出先生は自転車がお好きで、それで通勤されているという話題で盛り上がり、お互いに高揚する気持ちをやり過ごしていました。

 

やがて研究室に近づくと、偶然か、シルバーの大きな自転車が、新緑の木陰に、防犯チェーンすらなく、ただポツンと置いてあるのです。まさか、でしょうか?それでは出来すぎです。そこへ小出先生が微笑みながらお出迎えくださいました。息をつめる私に「これは愛車です、以前は向こうの山まで往復したものです」と、遠い目をされてお話されました。

 

小出先生は歩くのがとても速いです。KAZE代表の高橋さんとご一緒にどんどん2階に駆け上がり、ネットラジオのぽぽんさんと、私がその後をようやく追う。ところが、2階に上がってみると、おふたりの姿はどこにも見当たりません。困り切って、小出先生、と何度も呼びました。やがて、高橋さんが探しに戻ってくれましたが、先生の足の速さには、すっかり、驚いてしまったわけです。

 

お土産の日本酒を渡すと、先生は大事そうに抱えました。高橋さんは、純米酒派だと予測して当たった、と喜んでいましたが、お酒を飲まない私には、何がうれしいのかよく分かりません。みなさん何であれ、先生を心のよりどころとして理解しようとしているからでしょう。

 

姿勢が良く、歩くのが速く、よく笑い、相手の話をよく聞かれ、はっきりとした言葉でお話され、そしてお酒が大好きな、小出先生。子どもたちのことになると、机をたたいて怒った、小出先生。

 

さて、さて、私は、先生からこの実験所の、驚くべき事実を聞いたのです。(下部)


 

 

小出先生 速いです.jpg
 

 
研究所のこと.jpghttp://www.youtube.com/watch?v=G17OlYOK0B8

 

 


 小出先生、ここでは原子炉の研究してないのですか自転車を見つめる.jpg

[ ぽぽん ぷぐにゃん ] この京大の原子炉で、核兵器を作るというようなことはできないのですか?

[ 小出先生 ] はい、もともとここの原子炉実験所の燃料というのは、93%の濃縮ウランだったのです。

[ かがみ道子 ] え~っ、そうなのですか!では、可能性は大いにありますね。

 [ 小出先生 ] ええ、原爆作れましたよ(笑いながら)。

 [ 一同 ] ゔぇ~っ.......。

 [ ぽ ] そういうのを作る研究とか、してなかったのですか?

  [ 小出先生 ] まあ、そういうことに興味のある研究者は、ここには居なかったですね。もともと米国が作った原子炉を、燃料セットでくれたのです。ただ、日本なんていう国に、93%濃縮ウランを渡しとくということは、危ないということで、ある時から米国が日本だけではなく海外にはそうした燃料は回さない、ということにしたのです。それでここの原子炉には燃料がとうとうなくなっちゃって、10年くらい前に止まったんです。

 [ か ] え、今止まっているのですか?

 [ 小出先生 ] それで、ここには所員が200人いるので、みんな、どうしよう、ということになりました。とにかく原子炉を動かして組織を維持しようと、今は20%濃縮ウランで性能は悪いけれども、2年か3年前からまた動きだしたのです(笑)。

 [ ぽ ] 原子炉自体も古いのですよね?

 笑う.jpg[ 小出先生 ] 1964年から動いていますので、もう49年になります。もう、ご老体です(笑)。ここの研究所は、もともと、原子力というものに興味がないのです。皆さん意外に思われるだろうけれども、原子力発電の研究などしていないのです。大学というのはファンダメンタル(基礎的)な研究をするところですから、たとえば物理学もある、化学もある、生物学もある、さまざまな学問があるわけです。その中に中性子という放射線を使って自分の研究をしたいという研究分野があるわけです。そうした分野の研究者が、どうやったら中性子なんっていうものを使えるかと考えたとき、それなら原子炉を作ればいいとなったのです。

 [ か ] そうなのですね。原子炉の研究をしているというイメージがありました。

 [ 小出先生 ] だから、ここでは原子炉は中性子を出すための、単なる道具なのです。原子炉が研究対象ではありません。200人の所員がいて、80人が研究・教育にたずさわり、そのほとんどが物理学や化学、生物学をやっています。原子力に興味があるのは私のような圧倒的少数派です。その中でも反対しているのは、私のようにさらに少数派です(笑)。

 [ か ] 先生、そのことは日本中が知っています(笑)。

 

 

< 解説 >

 京都大学原子炉実験所(大阪府熊取町)は、熱出力5000kwで1964年に臨界に達しました。仮に商業用の原子力発電所の電気出力を100万kwとすると、熱出力はその3倍の300万kWです。原子炉実験所の原子炉はその600分の1程度の規模です。アメリカは核拡散防止の政策をとる中で、同実験所への93%高濃縮ウラン提供を中止したため、2006年2月23日、いったん運転停止しました。その後、20%濃縮ウランによって2010年5月26日から4年ぶりに運転再開し、2016年3月までの運転を計画しています。通常の原子力発電所では3~5%程度の濃縮ウランが使われます。


京大原子炉.jpg

京都大学原子炉実験所 研究用原子炉

http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/facilities/kur





 



 

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