子どもに『自己責任』を押しつける、司法

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2011年6月、福島県郡山市の小中学校7校に通う子どもたち14人が集まり、同市に対し年間1ミリシーベルト以下の環境で学習するための「集団疎開」を求めた裁判がありました。1審却下のあと、10名が仙台高裁に即時抗告しましたが、今年4月、仙台高裁はふたたび申立てを却下しました。

  

この子どもたちは、裁判の始まった時は郡山市内に住んでいました。しかし、裁判所の判断は時間がかかり「これ以上、高線量下の郡山市で生活できない」と1人、また1人と郡山市内から離れていきました。子どもたちは、仲のいい友だちみんなと一緒に集団疎開できることを願っていましたが、親たちが説得し、迷い、悩み、苦しみ抜いたすえに自主避難したのです。

  

もちろん避難した子どもは、郡山市が児童生徒を疎開させ、安全に学習できる場が用意されたら、またみんなと一緒に勉強するつもりでした。そのため、避難先はあくまで仮住まいです。ところが裁判所は、郡山市に残る1人の子どもだけを、"当事者"とみなし、他の子どもたちは、「移住で市内不在なので非保全権利を有しない」として、子どもたちに『線引き』をしたのです。

  

仙台高裁は、「郡山市の子どもは低線量被ばくで、生命・健康に由々しい事態の進行が懸念される」と放射性物質の晩発性障害のリスクを初めて認め、集団疎開を「抜本的方策」と述べています。ところが、子どもたちの訴えは却下しました。この矛盾した判断の隙間に見えるのは『自己責任論』でしょうか。

  

友を失い、そして残った友だちのことを心配しながら、慣れない地でようやくのこと学びの場を得るのは、子どもの自己責任でしょうか。責任は子どもには、けっしてありません。

 

 

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< 解説 >

子どもに、『自己責任論』を押し付けた

福島県、郡山市の小中学校7校に通う子どもたち14人が集まり、同市に対し、年間被ばく線量が1ミリ以下の場所での教育を求めて、福島地裁に仮処分申請しました。福島原発事故からまもない2011年6月のことです。ところが、裁判所は「100ミリシーベルト未満の晩発性障害は、発生確率について裏付けがない」とし、同年12月にこれを却下しました。

 

しかし、この判断を不服とした10人は、仙台高裁に即時抗告しましました。ところが今年4月24日、高裁はふたたび子どもたちの求めを斥け、却下を決定したのです。ただし、抗告人側の証拠と主張のいくつかは認められ、以下はその理由の要点です。

 

【評価すべき裁判所の判断】

(1)郡山市の子どもは低線量被ばくにより、生命・健康に由々しい事態の進行が懸念される。

 

(2)除染技術の未開発、仮置場問題の未解決等により除染は十分な成果が得えられていない。

 

(3)被ばくの危険を回避するためには、安全な他の地域に避難するしか手段がない。

 

(4)「集団疎開」が子どもたちの被ばくの危険を回避する1つの抜本的方策として教育行政上考慮すべき選択肢である。

 

このように仙台高裁は、放射性物質の晩発性障害のリスクを初めて認めました。その意味は大きいとされており、今回の判決で新たな分岐点を迎えたことは間違いありません。

 

しかし、このようにリスクを認め、集団疎開を「抜本的方策」としたのにも関わらず、「ただちに危険があるとまで認め得る証拠もない」として、最終的な判断は抗告却下でした。このひどく矛盾した議論は、まるで「危ないけれど、そう思うなら自分で逃げろ」と解釈できます。そして司法から『自己責任論』を押し付けられたのは、なんの罪もない子どもたちなのです。

 

「いま、フクシマの子どもたちにおそいかかっている前代未聞の人権侵害以上に、深刻な人権侵害は存在しない」世界に知られる思想家の ノーム・チョムスキーは語ります。

 
 
 

< 参考資料 >

・    子どもの安全な場所での教育を求める

「ふくしま集団疎開裁判」ブログ

http://fukusima-sokai.blogspot.jp/

 

・即時抗告申立書(2011年12月27日 仙台高裁提出文書)

 http://fukusima-sokai.blogspot.jp/search?updated-min=2011-01-01T00%3A00%3A00%2B09%3A00&updated-max=2012-01-01T00%3A00%3A00%2B09%3A00&max-results=50

 

・仙台高等裁判所による判決文(PDF)

http://www.ourplanet-tv.org/files/20130424sokai.pdf

 

・【徹底分析】仙台高裁判決~ふくしま集団疎開裁判 OurPlanet-TV

http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1580

 

原告のお母さんは、どのような犠牲を払って避難したのか(直筆書面)

http://fukusima-sokai.blogspot.jp/2013/01/blog-post_25.html

 

 

 

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