地表の活断層でだけでは、地震は見えない

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私たちは、地表にある活断層に注目しがちですが、NHKは地表のはるか下に多数の活断層があり、これが地震の原因になる、と放送しました。「あの巨大地震が残した膨大なデータが、活断層の研究を進展させ、未知の脅威を次々と浮かび上がらせている」(NHK)と。

  

原発は安全でしょうか。原子力規制員会は、4月10日、電力会社に義務づける新しい規制基準の案を決めました。11日から30日間、国民の意見を聞いたうえで修正を行い、7月18日までに施行されます。資料は2700ページ近く、専門用語、法律用語があふれています。

  

『NHKスペシャル』では、地表から場所により1~15kmも堆積層が積もっており、その地中深くにも活断層は存在し、これが地震を起こす、と主張しています。震度6弱を記録した13日の淡路島の地震も、地表に現れていない未知の活断層が疑われています。

  

新基準では、放射性物質を広範囲に飛散させる『過酷事故』が起ることをようやく認め、起きた後の対策を出しました。しかし、もっとも注目していたのは地震に対する検討です。当初、危うい活断層は40万年前まで見逃さない姿勢でしたが、結論は「12~13万年前」と従来のままでした。一方で、地震と津波の専門家チームは「これまでのやり方がそのまま通用すると思っているのは問題がある」と厳しい意見を多数述べています(解説参照)。いくら議論を重ね、資料を何ページも積んでも、肝心なところはこれまで通りです。

  

田中俊一委員長は「世界のレベルに負けないような規制基準になった」と言います。しかし、NHKの放送は、地表に現れた活断層が何万年前のものなのか、それが原子炉の真下なのか横なのか、そうした議論自体がすでに枠組みが小さ過ぎることを示唆しています。

  

世界でまれにみる地震大国、日本。

地震のない「世界レベル」(IAEA基準)でいいのでしょうか。

 

 

13027号

 

活断層②.jpg

 

 

 

< 解説① >

原子力規制委員会の新基準は、従来と同質

 そもそも、これまでの原発政策は、放射性物質が広範囲に飛散する過酷事故は起きない、検討すること自体が科学的ではない、としていたのです。福島の事故が起きた今回、これを初めて認めただけで、「世界のレベルに負けないような規制基準になった」(田中俊一委員長)と自慢できるようなことではありません。

  

田中俊一委員長は、稼働中の関西電力大飯原発3、4号機に対し、新基準をすぐには適用せず、6月下旬時点で安全を確認したうえで運転継続を認める方針です。重大な安全上の問題が見つかった場合は運転停止を求める、としていますが報告は関西電力がおこないます。また、北海道電力泊原発のような加圧水型軽水炉は、格納容器が大きく余裕があるという理由で、フィルター付きベント設備が、5年間猶予されました。中央制御室が使用不能となった際に機能を代替する特定安全施設についても、5年の猶予が認められています。

  

もっとも重大なのは、地震の考え方です。そもそもIAEA(国際原子力機関)では立地制限がありません。ですから、地震大国の日本では十分な独自の議論が必要なのです。規制委員会の専門家による地震・津波検討チームでは、厳しい議論が交わされています。ところが、地震への新しい考え方は「さらに研究を進めてほしい」などとなり、盛り込まれていません。津波に対しては、原発をもともと冷却水として海水を汲み取りやすい、低い地場に配置しているので、これに防波堤を立てるというツギハギだらけの対策に自ずとなります。

  

とにかく動かしたい、という電力会社・政府の圧力が、専門家の科学的議論に目をつぶってでも、新しい「規制基準」を再稼働への道とつなげるのでしょうか。これは、国民の安全に目をつぶると同じです。

  

 

「原子力災害対策指針(改定原案)に対する意見募集について」原子力規制委員会

http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu130410_1.html

 

 

 規制委員会の解説④.jpg

 

 かみ合わない③.jpg

 

 

< 解説② >

規制委員会『地震・津波に関わる新規制基準に関する検討チーム』の最新議事録

 ある施設が断層で傾いたり、破壊されたりしても被害はそれで終わるが、原子力発電所の場合は周囲の受ける被害の規模が全く違う。原子炉の施設が壊れるだけでは済まないことをまず考えてほしい

  

例えば、本震で配管が伸びきった後に余震が来たら耐えられるのか、そのような設計も追加していかなければならない。今の設計をベースに少しだけ変えるというのは危険だと思う。現状の設計は破棄して最初から作り直し、解析した上で試験を行い、学会等での議論を経て火力発電所等で地震を経験してから、原子力発電所に適用するというプロセスを経なければ信頼されないのではないか

  

特定する地震については活断層調査等によって選別することができるが、今のやり方では穴が開いてしまうのではないかという気もする。(中略)現状では不十分な点がありすぎのではないか。今のデータは観測網が整備されてから10年程度のデータにすぎない。

  

基準地震動を超える観測記録がここ数年間に何回も出てくるという状況は、(中略)これまでのやり方がそのまま通用すると思っているのは問題がある。

  

この資料では「がんばっていく」ということだけで、「断層の上にある原子力発電所を動かしてもいいと思う」とは書いていない。引き続きがんばってもらいたい。今のこの程度のもので動かすことを社会に説得することはできない。

  

  

規制委員会「地震・津波に関わる新規制基準に関する検討チーム」

http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/shin_taishinkijyun/data/0012_01.pdf

 

 

 

< 解説③ >

堆積層が活断層を隠し、ゆれの時間を長くする

 この数年の研究で、活断層は地中深く埋まっている、ということが明らかになってきました。そのメカニズムは、図で示すとおり、まず、最初の地震で岩盤に亀裂が入り活断層が生まれます。この時点ではその姿は地表に現われています。しかし、やがて時間が経過すると、やわらかな土砂が低い大地に、徐々に積もり堆積層を形成し、活断層は地中深くに隠れてしまいます。活断層は、最近の時代まで活動しており、将来も活動する可能性がありますから、埋もれても安心できません。

  

3年前からこの研究プロジェクトをはじめた、岩田知考教授(京都大学)は、大阪の中心を走る上町断層帯にそって、地中はるか15Kmに、南北40Kmにもわたる巨大な活断層(=震源断層)があることを明らかにしました。こうした研究を見ると、立川断層の調査は視覚的にはとても分かりやすいですが、わずか10mを掘っただけなので、簡単に活断層が現れるとは、とても思えないわけです。

  

ところで、この堆積層は、その柔軟性から地震のゆれの時間を長くすることが分かってきています。東日本大震災では、震源に近い仙台でゆれは5分程度でしたが、はるか離れた関東平野には関東ローム層が地表から1~5km堆積しており、揺れの時間は11分も続きました。

(NHKスペシャル MEGAQUAKEより)

  

NHK

http://www.nhk.or.jp/special/megaquake2/schedule.html
 

 

堆積層の形成.jpg

 

 

 

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