原発事故の確率は、10年に1回

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実は、原子力推進の総元締めである、政府の原子力委員会は、10年以内にまた福島原発と同規模の過酷事故が起こる、という妥当な試算をしているのにもかかわらず、都合が悪かったのか、不採用にしているのです。

  

2011年10月25日、同委員会の小委員会で発表した「原子力発電所の事故リスクコストの試算」の中で出てくる、この計算では「炉年」という単位を用います。これは、複数の原発の稼働年数を積算する方法で、1基がすでに10年稼働していると10炉年、2基目が15年稼働なら15炉年とし、それらを足して25炉年と計算します。

  

問題の計算は、まず対象を日本に限定します。福島の事故で3基爆発したので、事故を3回とみなします。日本の原発は1494炉年(廃炉を含む)ですから、3回で割ると頻度は約「500炉年に1回」となります。50基が再稼働すると、500分の1掛ける50で、10炉年になります。つまり、10年に一度事故は起きる、となります。

  

ちなみに、日本を除く世界は12,859炉年で2事故、運転中の原発は377基なので、「17年に1回」となります。

  

試算は他に複数あり、対象を世界に拡げて日本が地震大国であるということを計算から削ぎ落としたものや、津波による1回の事故としたものなどです。しかし、事故を3回とみなし個々の詳細な事故究明が必要です。原子力ムラは損害賠償にも影響が大きい地震では無傷とし、「1000年に1度の津波」による連鎖事故1回としたい。そして他の原発の再稼働にとっても、津波にこだわる理由が、この確率計算にもあるのです。

  

仮に、福島原発事故を1回とカウントしても30年に1回となり、人生で2回も遭遇するのです。しかも、過酷事故の手前の事故はこのかぎりではありません。あなたは、そんな未来を子どもたちに手渡したいですか?

 

 

13023号

 

 

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< 解説 >

 事故の『確率論的安全評価』(PSA)を利用する推進派

 スリーマイル島の事故が起きてから、アメリカは原発事故に対して『確率論的安全評価』を導入しました。これに対して小出 裕章氏は、

  

「どんなに確率が低くても破局的な事故が起きる可能性は常にある。それを無視してよいという科学的な根拠は存在しない。その点に悩み続けてきた原子力推進派は、破局的事故が起きる確率が極めて低いことを示そうとした。そのために動員された手法が『確率論的安全評価』と呼ばれるもの」と切り捨てています。

  

この手法は、たとえば三つの小さな機器の故障が重なって、放射能が外部に漏れる事故を想定します。ひとつの機器の故障が100回に1回起きるとすると、三つが重なるのは、1/100×1/100×1/100で、100万回に1回と計算されます。このように無視できるほど一定基準以下であれば、その事故に対して安全性が確保されていると工学的に言い切ります。ご存じの通り、分数と分数を掛けていくと、どんどん値は小さくなるものです。この点、本文で紹介した原子力委員会(当時)の、起きてしまった過酷事故(炉心が著しく損傷、放射性物質の大量放出につながるような重大事故)を、確率(炉年)で議論する方が、妥当であったでしょう。

  

小出氏は米国原子力委員会(AEC)の報告書(1957年)の、過酷事故が起きた場合の影響試算を示しながら、

「もし原子力発電所の大事故が起きれば、被害が破局的であることを示した。ただ、その一方で、そうした大事故の確率は、『いん石が米国の人口密集地に落下して死者が出るのと同程度』であり、原子力発電所で万一の大事故が起きた場合は、天災と考えればいいというのであった」と述べています。

 

すでにこの時に、福島原発事故を津波の天災であったかのように偽装する、今日の政府・原発推進派の手法を予言されていたのです。

  

  

★「原子力発電所の災害評価」小出 裕章氏(2004年)

http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No97/koide_doc.pdf

  

「原子力発電所の 事故リスクコストの試算」政府・原子力委員会(発表:内閣府 原子力政策担当室)

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/hatukaku/siryo/siryo3/siryo3.pdf

  

「リスク情報を活用した原子力安全規制の導入に向けての取り組み」原子力規制委員会

http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/risk/index.htm

  

「リスク情報を活用した安全規制の導入に関する関係機関の取組みと今後の課題と方向性」
(2007年9月20日)原子力安全委員会

http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/sonota/houkoku/houkoku20070920.pdf
 

 

 

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