日のいずる国に吹いた、風

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〜シリーズ『風と放射能』(終)

 

この春、日本中に大陸からの風が吹き荒れています。「PM2.5」という聞きなれない言葉に翻弄(ほんろう)され、これが放射能よりも重要な扱いになっています。ところが、大陸から吹く風にもすでに放射能が含まれ、20世紀の核実験という「闇」を運んでくる。

  

2011年のあの春も、北から、南から、そして西からフクシマに風が吹き荒れました。日本が極東になければ、もし大陸の反対側のイギリスに位置していたら、ヨーロッパは広範にわったて汚染されていた。極東にあるからこそ海に救われ海を汚(けが)し、人々は己の陸地に吹いた、全体の半分に過ぎない放射能だけを語ります。

  

"ふるさと"とは、遠くから想う生まれ育った土地のこと。だけど今の『フクシマ』は、"過去の素晴らしさ"を懐かしむ"ふるさと"なのです。表面上はふつうの生活に見えても実際は、剥(は)ぎ取られ、棄(す)てられた土地だからです。大地も、山も、河も、海も、そして笑顔も、けっしてかつての日々には戻れない。

  

破壊し汚した者たちは、大手をふって闊歩(かっぽ)し、虚構に飾られた『フクシマ』をかつての福島と押しつける。真実ごと除染された住民たちは、自分自身に言い訳し、不安な心を抑え込み、日常生活に合理化された理屈を持ち出さざるをえない。いまだに、どれほどの痛手を被ったのかを知るすべもなく、人々みずから、すべてを『闇』の中に隠そうとしている。

  

かりに、日本が西の果てだったら、隣国の圧力でこの21世紀の『闇』は白日の下(もと)に引き出されたのだろうか。だが、今のままでは、日のいずる国に、決して日はのぼらない。

 

<3018号>

 

 

もし、日本が.jpg
 

 

 

< 解説 >

 

風向きと、放射能放出の時間変化

 

本文の挿絵で使ったデータは、ノルウェーの大気研究所 (NILU) の放射能拡散予想データ 、2011年4月14日解析、4/14-4/17の予想)です。ここでは、あくまでも目安として使用しています。このサイトはすでに閉鎖されていて、追加の分析はできません。

  

ただし、その期間(14日03時から18日0時)は、下図で示すように、大気に放出された放射能が最も急激に増加するタイミングを示しています。

  

また、陸地と海の比率についても、ここでは東電の分析を使用しています。一方、気象庁気象研究所ではセシウムだけに注目して「約7割にあたる大気から海への降下」としています。この陸と海の比率は、元の総量の計算にも影響を与えます。同研究上ではセシウムの従来推計の2倍の4京ベクレルとなっています。

  

「放射性物質の大気中への放出量の推定について」東京電力

http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120524j0105.pdf

  

「従来推計の2倍 気象庁気象研究所」朝日新聞

http://www.asahi.com/special/10005/TKY201202280824.html
 

 

期間③.jpg

 

 

 

放射能の総量

 放出された放射能の総量については、各機関が数回にわたり計算結果を発表しています。下部のグラフでは東京電力のものが一番大きい値を出しています。なお、気象庁気象研究所の検証ではセシウム137は1.5~2京ベクレル(15~20PBq)ですが、東京電力は1京(10 PBq)ですので、気象庁の予測を採用するとさらに総量が増える可能性があります。

  

一方、あらためて目を引くのは、ヨウ素131の量の多さです。半減期は短い(8日)ものの、人体にきわめて毒性の強いこの核種は、どれだけの子どもたちを傷つけて、今も甲状腺はこの『闇』の拡大に脅かされているのでしょう。

  

 

 

総量(機関別).jpg

 

 

 

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