今日で、ちょうど35年

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~ひとり、泊原発の海水温度を測り続けて~

 

「中学生の頃、100隻くらいあったスケソウ業の船が今は3隻だけ。水深150m前後で泳いでいたスケソウが、今は300mと深いところへ行った。それに合わせた網をそろえれば費用が2倍。巻き上げ時間も2倍。つまり採算が合わなくなったのです」

 

北海道岩内町の斉藤武一(60)さんが、泊(とまり)原発からでる温排水による海水温度を測りつづけて、3月23日の今日でちょうど35年になります。

 

原子力発電では、核分裂で生じる熱で、水を沸かし、蒸気を発生させ、これを発電機のタービンに噴射して発電します。この「蒸気でタービンを回す」という原理は、火力発電と同じです。

 

問題はどれだけ効率的に「お湯を沸かす」のかということです。最新のガスを使う火力発電は、燃料のエネルギーの約60%を電気にできます。ところが、原子力発電はこの変換効率が約30%程度しかないのです。残りは、排水の中に熱として海に流され、海水温は約7℃上がるといわれています。

 

「北海道電力は、わずかしか水温は上がらないという。でも排水は1、2号機だけで毎秒80トンあります。80トンとは石狩川の水量の3分の1に相当するんです」。石狩川は北海道でももっとも水系が長く、流域面積も最大で、水量が最も多いのです。

 

斎藤さんの子どもの頃は、家族も親戚も友達もみんな漁師や魚屋ばかり。毎日20~30個のアワビをおやつとして食べていたと語ります。「素晴らしい故郷の海の温度があがり、目の前でどんどん変わり果てていった」青年になった斉藤さんが、なんとかしなければと一年間考えて得たのが、ひとりでもできる海水温調査でした。古いノートは1978年3月23日の記録から始まっています。

 

しかし泊原発は1989年稼動から毎日、海を温め続けていいます。それでも、斉藤さんは明日を信じて測ります。青年の頃の希望は、なにひとつ変わっていないのです。

 

 

 13019号

 

 

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< 解説 >

 生態系の破壊、そして温暖化

 斎藤氏は泊村からわずか5km離れた岩内町に生まれ育ちました。温排水のせいで海水温は平均0.3度上昇しているし、0.1度の変化で魚は生息地を変えるので、今では特産品だったスケソウダラが捕れなくなったことを訴えています。

  

こうした、原発からでる温排水が海の生態系を変えていることは、他の原発周辺の海でも問題になっています。「原発銀座」と言われる福井県の若狭湾では、原子炉の停止に伴い温排水の供給が止まったため、マガキガイなどの南方系の生物たちは軒並み衰弱している報告がなど多数あります。

  

「原発は環境にやさしい」「CO2を排出しないから温暖化防止になる」という電力会社の説明は、その足元から崩れているのです。

  

たとえば、「温暖化」防止についても、こう考えることができます。原発の温排水は地球の海自体を温めている、CO2を議論しなくても、直接「温暖化」を足元で行っている、という事実です。

  

原発の熱効率は30%程度なのなので、1基で発電するエネルギーの2倍程度が熱エネルギーとして排出されます。世界には427基の原発がありその総発電量は単純計算で約3400兆wh程度、その2倍が熱エネルギーとして海に流れているのです。W・S=Jという方程式でそのまま計算するわけにもいかないでしょうが、そのすべての温排水は、どれほど地球を温めているのでしょうか。

  

そう考えると、「原発は環境にやさしい」という言葉は、科学の言葉というより、宣伝のコピーに思えてきます。

 

 

 

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